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Photo by Bob Coscarelli
 

ジャンク~インダストリアルロックを彷彿とさせる『Spencer Gets It Lit』

4人の間に新たな化学反応が生まれたことは、『Spencer Sings The Hits』と同じキー・クラブで2021年7~8月にレコーディングした本作『Spencer Gets It Lit』を聴けば、明らかだ。だからこそのバンド名義のリリースなのだと思う。

1曲目の“Junk Man”から全編でメタルパーカッションが鳴り響き、シンセがフリーキーに唸っている。60’s調のノスタルジックなオルガンが鳴る“Death Ray”、“Bruise”、“The Devil’s Ice Age”、スペンサーがR&B調のリフを奏でる“Get Up & Do It”、ハードロッキンなリフがストゥージズを連想させる“Germ Vs. Jerk”といったガレージロックという言葉が思い浮かぶ曲も収録されているが、『Spencer Gets It Lit』を敢えてジャンルで語るなら、ジャンクロック、あるいはインダストリアルロックという言葉のほうがふさわしい。

『Spencer Gets It Lit』収録曲“Junk Man”
 

プリミティブなロックンロールとインダストリアルなジャンクサウンドの融合を目指したスペンサーの試みは、ようやくここで完成したと言えるだろう。その到達点と言える曲が“Layabout Trap”だ。ファズギターのリフに加え、メタルパーカッションも鳴る曲だが、エルヴィス・プレスリーをデフォルメしたようなスペンサーのシャウトとスプーキーに鳴る厚いシンセのリフがジャンク/インダストリアルロックの源流、スーサイドを彷彿とさせるのだからたまらない。

『Spencer Gets It Lit』収録曲“Layabout Trap”

 

クワージのジャネット・ワイズが参加し、さらに進化するザ・ヒット・メイカーズ

ここに来て、スペンサーのキャリアがこんな展開を見せるとは。ちょっと驚きながら、スペンサーがひとまず完成させたザ・ヒット・メイカーズのサウンドを、ここからどう進化させていくか、大いに期待している。

なぜなら、『Spencer Gets It Lit』のリリースツアーにはソードに代わって、クワージのジャネット・ワイズが参加するからだ。スリーター・キニーやスティーヴン・マルクマス&ザ・ジックスでプレイしてきたワイズが加わることで、ザ・ヒット・メイカーズにさらなる化学反応が起きることは、まず間違いない。新しいサウンドに貪欲になっているスペンサーたちのことだ。そこでザ・ヒット・メイカーズがどんなふうにハネるかを考えただけでワクワクが止まらないではないか。

なお、『Spencer Gets It Lit』の日本盤にはボーナストラックとして、昨年、ギターウルフ主催の〈シマネジェットフェス〉にリモート出演したときのライブ音源が7曲追加されている。『Spencer Sings The Hits』の曲のみならず、プッシー・ガロアの“New Breed”も含むその7曲もザ・ヒット・メイカーズのライブの熱気を伝えるものという意味で必聴だ。

 


RELEASE INFORMATION

JON SPENCER & THE HITMAKERS 『Spencer Gets It Lit』 In The Red/ソニー(2022)

リリース日:2022年4月1日
配信リンク:https://SonyMusicJapan.lnk.to/JonS_SGL 

TRACKLIST
1. Junk Man
2. Get It Right No
3. Death Ray
4. The Worst Facts
5. Primary Baby
6. Worm Town
7. Bruise
8. Layabout Trap
9. Push Comes To Shove
10. My Hit Parade
11. Rotting Money
12. Strike 3
13. Get Up & Do It
14. Germ Vs. Jerk
15. The Devil’s Ice Age
16. Wilderness (Live) ※
17. Fake (Live)
18. Time 2 Be Bad (Live)
19. Tough Times In Plastic Land (Live) ※
20. New Breed (Live) ※
21. Hornet (Live) ※
22. Can’t Polish A Turd (Live) ※
※日本盤ボーナストラック