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tofubeatsが4年ぶり、5作目のアルバム『REFLECTION』をリリースした。また、『FANTASY CLUB』(2017年)以降、CDに封入していた制作日記は3年4ヶ月年分、約30万文字というボリュームとなったため、同日に初の著書「トーフビーツの難聴日記」として出版リリースされることとなった。

ずっと同じ言葉を言っていても、同じことをしていても、社会や状況の変化で意味がすっかり変わってしまうことがある。例えば〈集まる〉という言葉はコロナ禍の以前と以降では全然違った聞こえ方をするだろう。

また、同一の曲が時間とともに全く違う聴かれ方や響き方をすることがある。ある曲が運動のために使われたり、はたまたシティポップの楽曲として扱われたり。

筆者はtofubeats氏との10年来の知人であるが、氏が“水星”(2011年)をリリースしメジャーデビュー、そして会社を設立するというプロセスを傍目で応援し、また励まされてきた。そういった状況が変化する中、tofubeatsは変わらずに音楽を作り続けていた。むしろ自分の中の大切な何かを変えず、続けていくために変化をしているように見えた。その中で、tofubeatsはこの数年間の目まぐるしく変わった状況や自身の環境の変化などをどのように受け止めたのだろうか。

tofubeats 『REFLECTION』 ワーナー(2022)

 

鏡の中の自分

――アルバムを聴かせていただいたんですが、すごく良かったです。

「ありがとうございます。なかなかこう改まって感想を聞く間柄でもないので嬉しいです」

――最初に〈鏡〉をテーマとして掲げたというのが制作日記にも書かれていたんですけど、それは具体的にはどういう感じだったのでしょうか?

「2018年のunBORDEのツアー(所属レーベルが主催した〈unBORDE LUCKY 7TH TOUR〉)中、年末に博多のビジネスホテルで突然、突発性難聴を発症しまして。そのとき、もし音楽ができなくなったらどういう仕事をしようかと思って、パソコンを開いて資格のサイトを見たんですよ。これ多分、神野さん(インタビュアー)が思うtofubeatsらしさ全開のエピソードなんですけど(笑)。

そのときは大所帯のツアーだったので、迷惑はかけられないなと思ってそのままツアーを遂行して、その後しばらくしてから自分のソロツアーで博多の同じホテルに泊まったんですよ。そのときも同じホテルの同じ作りの部屋で、そこから鏡越しに見える外の景色もおんなじで。〈何ヶ月か前にこの鏡を見たときに耳が聞こえなくなってたな〉って思って、その鏡を見た時点で耳は治ってなかったので、〈鏡の中の自分の耳が聞こえていないなんてことは想像してなかったな〉と。それが面白いなと思って、そのときの自分のツラを鏡越しに撮ったんですね。

それが今回のジャケットの元になったんですけど、そこから〈鏡〉をテーマにやってみようというのを足がかりにして、それが最終的に“REFLECTION”になったっていう感じですね」

『REFLECTION』ジャケット

――その〈鏡〉をテーマにしたのが2018年で、コロナ禍になる前のことなんですよね。Instagramで検温のときの画面を撮るようになってからだと思っていました。

「実はコロナになる前に出したアルバム未収録曲の“Keep on Lovin’ You”(2019年)のジャケットが鏡なんですよ。それは当時もうすでに〈鏡でいく〉というのは心に決めていて、ジャケットイラストをお願いしている山根(慶丈)さんに〈鏡だけは入れてくれ〉っていうふうにお願いしたからなんです。そこから逆に鏡っぽいものを探した結果、検温器みたいなものに行き着いたっていう」

2019年のシングル“Keep on Lovin’ You”ジャケット