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コラム

リンダ・リンダズ(The Linda Lindas)『Growing Up』ブルーハーツ由来のバンド名を持つLAの4人組が〈成長〉を刻んだアルバムを完成

©Zen Sekizawa

 昨年5月に“Racist, Sexist Boy”のライヴ動画が拡散されてこのバンドの存在を知ったという人は多いだろう。全員が女性で、全員が十代で、それぞれアジア系とラテン系をルーツに持つLAの4人組、リンダ・リンダズ。メンバーのルシアとミラは姉妹、エロイーズはその従姉妹、ベラは親友、という関係性から結成されたバンドである。日本のリスナーにはフックになったであろうリンダ・リンダズというバンド名は、まさに山下敦弘監督の映画「リンダ リンダ リンダ」(2005年)と、その元になったブルーハーツの“リンダリンダ”に由来するものだという(Instagramでもカヴァー演奏を公開している)。

 件の曲はクラスの男子に〈親から中国人に近づくなと言われた〉とミラが言われた経験を元に書かれた、人種差別や性差別を真正面から糾弾するパンク・チューン。〈まだ若い少女たちのバンド〉という外面的な珍しさ(とあえて書いておく)も話題を加速した理由のひとつではあろうが、何よりヘイトクライムが横行する風潮に向けられた楽曲そのものの時代性と真っ当なメッセージこそがこの曲をより広く遠くへと届けたのだろう。2004~2010年生まれという年齢も含めてバンドのプロフィール項目のひとつひとつが表現の強度を高めるポイントとなるのも確かだが、そこだけに寄りかからない固有の魅力がこの4人にはあるのだ。

 そんな彼女たちがバンド結成に至ったのは、2018年にクリスティン・コントロール(元ダム・ダム・ガールズ)に〈Girlschool LA〉のステージに誘われたことがきっかけ。2019年4月にはビキニ・キルの再結成ライヴでオープニング・アクトを務め、その姿を観たエイミー・ポーラー監督の目に留まって2021年3月公開の映画「モキシー~私たちのムーブメント~」に出演を果たしている(作中ではビキニ・キルやマフスのカヴァーも披露)。その2か月後には先述のライヴ動画が話題になったLA公立図書館でのパフォーマンスを披露し、それをきっかけにエピタフと契約。7月には同レーベルでの初音源として元気なパワー・ポップ“Oh!”を発表、さらにベラの愛猫について歌った“Nino”、メロディックな“Talking To Myself”、キャッチーなリフが牽引する“Growing Up”……とコンスタントに佳曲を届けながら、今回のファースト・アルバム『Growing Up』完成に漕ぎ着けた。

THE LINDA LINDAS 『Growing Up』 Epitaph/Silent Trade(2022)

 アルバム制作を後見したのは、パラモアやバッド・レリジョン、ベスト・コーストらを手掛けてきたプロデューサー/エンジニアであり、ルシアとミラの父親でもあるカルロス・デ・ラ・ガルザ。もともと音楽の身近な恵まれた環境が〈成長〉を促したのは確かだろうが、クラシックな70年代パンクのキャッチーな親しみやすさをベースにポスト・パンクやパワー・ポップ、メロコアなどのフレイヴァーを織り交ぜる4人のセンスと実力がこのオリジナリティーを生み出したのも間違いないだろう。実際に先行シングル群は“Racist, Sexist Boy”とは違う側面を見せるものだったし、アルバムにはパンキッシュな“Fine”もあれば、ボサノヴァ風味も交えてスペイン語で歌う“Cuántas Veces”、メロディアスなギター・ロックの“Remember”“Magic”など幅広い楽曲が並ぶ。スタジオ録音版で収められた“Racist, Sexist Boy”も含め、いずれの曲にも共通するのは弾けんばかりのエネルギーで、抑えつけられた感情をシンプルにデカい音で爆発させるような痛快さが最高に素晴らしい! なお、日本盤には“リンダリンダ”のカヴァーがボーナス収録されているのも注目だ。

 このようにして文字通りの〈成長〉を刻んだアルバムを完成させた4人は、今夏のサマソニ出演でいよいよ待望の来日を果たす。若さゆえに〈真夏の大冒険〉的な言い回しで飾られることもありそうだが、それだけじゃない何かを彼女たちが備えていることはアルバムを聴けばわかるはずだ。

 


リンダ・リンダズ
ベラ・サラザー(ギター/ヴォーカル)、エロイーズ・ウォン(ベース/ヴォーカル)、ルシア・デ・ラ・ガルザ(ギター/ヴォーカル)、ミラ・デ・ラ・ガルザ(ドラムス/ヴォーカル)から成るLAの4人組バンド。2018年1月に〈Girlschool LA〉に誘われたことをきっかけに結成。2020年12月に初のEP『The Linda Lindas』を自主リリース。2021年5月にLA公立図書館で演奏した“Racist, Sexist Boy”の動画が話題になってエピタフと契約。以降もコンスタントに楽曲リリースを経て、今年4月配信のファースト・アルバム『Growing Up』(Epitaph/Silent Trade)が6月8日にフィジカルでリリースされる。

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