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Photo by Yoshitake Hamanaka

リバーブを極力排除

――その方向性は、1曲目の“Start Again”の時点で明らかですよね。前ボーカリストのEmilyさんは子音で空気を抜いていく感じの、まさにドリームポップ的ボーカリゼーションでしたが、Erikaさんの声はよりクリアでツヤがあるから、本作の音にぴったりだなと。

『Search + Destroy』収録曲“Start Again”

「もうおっしゃっていただいたとおりで。Erikaの声質や特性を活かすには、もっと大胆なボーカルで、ミックスもバンドの上にしっかりボーカルが乗って、前面に出てるっていうのをやりたかったんです」

――2010年代と20年代のギターロックの最大の違いもそこで、要するにボーカルが置かれている位相が違うんですよね。2010年代のインディーって、ドリームポップ的なものが象徴的で、サウンドの下にボーカルが位置するんですけど。

「たしかにたしかに」

――今はもうアンバランスなぐらい、サウンドの上にボーカルが乗り出してきている。今回はErikaさんのボーカルの特徴を生かしたことで、その時代性に合致したように感じます。

「Erikaがメロディーを自分で書き始めたというのも大きいんですよね。僕は黒玉というか、短い音符的な細かい動きをするメロディーを作るんですけど、Erikaが作った、たとえば“One Last Girl”とか、めっちゃ白玉なんです。彼女はすごく伸びのある、一音一音が長いメロディーを書くんですね。たぶんそれって、アヴリル・ラヴィーンやパラモアの影響でもあって」

――結果、明らかにメジャーな音になりましたよね(笑)。

「そうですね。そこはブレイクスルーしたい気持ちとかも含めて、意図的にやったというか。

あと、パキッとした音作りに関して、プロデューサーのアンディ(・サヴァーズ)にもかなり念入りに〈とにかくはっきりさせたいんだ〉ということを伝えていたんです。リバーブを極力なくそうということを考えましたね、アルバムを通して。これまではギターには絶対リバーブがかかってたし、ボーカルにも、なんならベースにもかけるっていう音楽をやってたんですけど、今回はとにかく排除しようっていうのが全員の共通した意見としてあったんです」

 

リフはニルヴァーナ、サビはラッシュ、最後はナイン・インチ・ネイルズ

――2曲目の“Depression”はかなり音にコンプレッションがかかっている前半と、ヌケ感のある後半の転調のメリハリが効いていますよね。

『Search + Destroy』収録曲“Depression”

「“Depression”はスタジオで合わせながらグルーヴを作っていくという作業を初めてした曲です。Tamioが最初に持ってきたリフはわかりやすすぎるというか、〈ちょっとストレートすぎないかな?〉みたいな感じだったんですけど、やっていくうちにどんどん良くなっていって。

Tamioが言ってたのは、〈最初のリフのところはニルヴァーナみたいな感じだけど、サビはラッシュ(Lush)で〉みたいなことでした。最後の展開も、ナイン・インチ・ネイルズの“The Perfect Drug”のように、途中で入るイカつい打ち込みのドラムを入れたらかっこいいよね、って。

97年のサウンドトラック『Lost Highway』収録曲ナイン・インチ・ネイルズ“The Perfect Drug”

“Depression”のようなストレートなコード進行は、今作で僕がはっきり超えた一線でもありました」