エル・ファニングが主役を務め、製作や音楽に「ラ・ラ・ランド」のスタッフが再結集した映画「ティーンスピリット」が2020年1月10日(金)、全国ロードショーされる。
イギリスの離島、ワイト島に暮らすポーランド移民のヴァイオレット・ヴァレンスキ(エル・ファニング)は、厳格な母親や閉鎖的な環境から抜け出し、いつかスター歌手になることを夢見る内気な少女。ある日、バイト先の閑散としたパブで歌っているところを、くたびれた中年男性で実は元オペラ歌手のヴラド(ズラッコ・ブリッチ)に見出される。初めは警戒していたヴァイオレットだが、テレビのオーディション番組に出演するため保護者&マネージャー役を彼に依頼。2人は力を合わせ、スターへの道を目指すのだった。
「イングリッシュ・ペイシェント」(96年)などで知られる映画監督アンソニー・ミンゲラの息子であり、俳優としても活躍するマックス・ミンゲラの初監督作となる「ティーンスピリット」を彩るのは、グライムスやノー・ダウト、ケイティ・ペリーらの洋楽ヒット・ソングの数々。近年ヒット作も続いている音楽映画の注目作として話題を呼んでいる。また、劇中ではエル自身もヴォーカルに挑戦し、ちょっとハスキーで繊細な歌声を披露しているのもトピックのひとつだ。
そこでMikikiでは、先日セルフ・タイトルのファースト・アルバムをリリースしたばかりなガールズ・トリオ、TAWINGSのCony Planktonと、国内インディー・ポップ・シーンでもとりわけ華やかな存在感を放っている5人組・Luby SparksのErika Murphyという互いに親交も深い2人のヴォーカリストによる、「ティーンスピリット」をテーマにした対談を敢行。主人公・ヴァイオレットと同じく歌や音楽で表現する夢に向かって突き進む自身とを重ね合わせながら、自分らしく生きること、心を奮起させてくれる大切な存在についてなど、たっぷりと語ってもらった。
★映画の関連情報と、それぞれの最新作についてのConyとErikaからのコメントを記事末尾に掲載!
〈ガールズ・パワー〉を代表するアーティストの楽曲が満載
――映画、どうでしたか?
Cony Plankton(TAWINGS、ギター/ヴォーカル)「よかったです! いわゆるシンデレラ・ストーリーだけど、自分もヴァイオレットと似たような境遇や心境があって。泣けたり興奮したり(笑)、いろんな感情が湧き上がりました」
Erika Murphy(Luby Sparks、ヴォーカル)「私もそうですね。共感するところがたくさんあって、自分に置き換えて観てしまいました。マネージャーのヴラドとの関係性とか、ミステリアスだけど〈お父さん的存在〉として彼女が惹かれ、心を通わせていくのもよくわかるし。最初から最後まで面白かったです」
Cony「ヴラドの演技がいちいちグッときましたね……。ちょっと不器用なんだけど、ヴァイオレットを応援したいと思っている感じが自分の父親に似ていて(笑)。そこはかなり泣けるポイントだった」
Erika「音楽の使われ方も良かったよね。ノー・ダウトの“Just A Girl”を聴きながらベッドルームで踊るところとかめっちゃ好き。あと、ケイティ・ペリーの“E.T.”とか※、90年代から現代までの〈ガールズ・パワー〉を代表するアーティストの楽曲が沢山かかるのも良かったし、ヴァイオレットのプレイリストとして成り立ってるなと思って観てた」
※劇中で使用されているのは、マリウス・デ・フリース&エルダッド・ゲッタによるカヴァー・ヴァージョン
VARIOUS ARTISTS ティーンスピリット(オリジナル・サウンドトラック) Interscope Records(2019)
――フレッド・バーガー(製作)、マリウス・デ・ヴリーズ(エグゼクティブ音楽プロデューサー、作曲)という、「ラ・ラ・ランド」のチームが関わっているだけあって、選曲のこだわりも並々ならぬものがありますよね。今、Erikaさんがおっしゃったようなガールズ・パワーを感じさせる曲はもちろん、オービタルの“Halcyon+on+on”やメジャー・レイザー&DJスネイクの“Lean On feat. MØ”といった洋楽ヒット曲もガンガンかかるし、エルの歌う“Wildflowers”はカイリー・レイ・ジェプセンがソングライティングを手がけています。
Cony「私は正直、これまで洋楽ポップスってそこまで聴いてこなかったんだけど、オープニングでグライムスの“Genesis”が流れたのはグッときたな。
あとオーディションの決勝戦で、楽屋からステージに向かって歩いていくシーンも印象に残りましたね。敢えて無音にして足音だけが響くところとか、大事なライブに臨むときの自分の心境ともオーバーラップさせてしまいました。マイクの前に立って、1音出すまでの緊張感というか、静寂の中で自分が新しい世界を作り出していく高揚感……。そこは、大好きな映画『ボヘミアン・ラプソディ』をも彷彿とさせるというか。〈おお!〉って思いながら観ていましたね(笑)」
――オーディション・シーンで、同じくオーディションを取り上げた映画「フラッシュダンス」(83年)の主題歌“Flashdance... What A Feeling”が流れたところなど、遊び心があって良かったですよね(笑)。エル・ファニングのヴォーカルはどう思いました?
Erika「最初、吹き替えかと思った(笑)。普通に上手くてびっくりしたよね」
Cony「やっぱり女優さんだからかな、表現力とかさすがですよね」
Erika「エル・ファニングは個人的にめっちゃ好きなんです。『ネオン・デーモン』(2016年)とかすごく印象に残ってる」
Cony「確かあの映画も、モデルになるためジョージア州からLAへ出てきた女の子の話だったよね。いなたい感じだったのが、注目を集めていくうちにどんどん垢抜けて綺麗になっていくっていう、今作とちょっと似たような役回りで。そういう表現力に長けているんだなって思いました」