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Photo by Nancy Bundt
レヴォリューションの先進的な演奏
――高木さんはベーシストですが、レヴォリューションでベースを弾いているブラウンマークについてはどう思いました?
「ベースのスラップで、ピックではなく親指だけで弾くサム(親指)のアップダウンという奏法があるのですが、最近の奏法だと思っていたら彼(ブラウンマーク)がやっていて、こんな昔からあったんだなと。チャック・レイニーとかがワンフィンガーでアップダウンをやっていたのは知っていましたけど。でも、自分が疎いだけなのかもしれません。
あと、このライブのドラマー(ボビー・Z)が使っているのは、あまり映ってなくてわからないですが、電ドラと生ドラをまぜたキットなのかな? それも新鮮でした。今でこそSPD(-SX)っていうサンプリングバッドがあるけど、ファンクやR&B系で、85年の時点であの音像は凄いなと。音源が打ち込みでも、それを同期じゃなくて全部生に置き換えるスタイルって現代的な手法だと思っていたんですけど、85年にこのクォリティーでそれをやっていたんだというのは驚きですね」
――そういえば、プリンスの曲で、このライブでもやっている“When Doves Cry”、あと、“Kiss”はベースレスな曲として知られていますが、ベーシストとしてどう感じていますか?
「ブラックミュージックでベースが入っていない曲ってあんまりないと思うのですが、そういうところをヒョイって超えてきますよね、プリンスは」
BREIMEN“IWBYL”のサックスのフレーズはプリンス“I Wanna Be Your Lover”
――『ライヴ 1985』で一番印象に残ったシーンは?
「まずセトリがいいなぁと思って。2時間あって20曲という尺の配分も。短くシュッて終わる曲があったり、イントロが長い曲もある。普段セトリを作る側からすると、ゾーンで分けたりしますが、プリンスのライブは一曲ごとに世界を作る時間がありますよね。だから〈激しい〉〈しっとり〉〈しっとり〉と、ジグザグみたいな展開になっていても成立するというか。
特に“Do Me, Baby”の入りが良くて。改めてこのライブで聴いて気づいたのですが、この曲、ZAZEN BOYSの“KIMOCHI”の元ネタかな?って。“KIMOCHI”は吉田一郎さんがいた頃のライブバージョンが特に顕著で、あのベースのフレージングとかはそうなんじゃないかな。向井秀徳さんもプリンスに影響を受けているらしいですね」
――“Yankee Doodle”から“Do Me, Baby”に入っていく時の寸劇みたいなところも含めて、全体的にミュージカルっぽいですよね。
「あの寸劇はいいですよ。あれ、俺もやりたいし、やんなきゃなって思った(笑)」
――個人的にBREIMENの曲は“棒人間“のT-Grooveリミックスで初めて知ったのですが、“Lie on the night”を聴いた時、これ“Do Me, Baby”じゃん!って思いました。
「実は全然リファレンスにはしていなかったですけど、あのコード進行とループしてる感じは確かに似てますね。
“Do Me, Baby”もそうですし、これも具体的にリファレンスしたわけじゃないですが、イメージは七尾旅人さんの“サーカスナイト“とか、ああいう温度感で作りました。あと、ZAZEN BOYSの“KIMOCHI“も。だから、そういう曲を作ったら自然と“Do Me, Baby”になっちゃいますね(笑)」
――それこそライブで“Lie on the night”に続けて“Do Me, Baby”をやるとか、マッシュアップみたいな感じでもいいですし、自分も含めて年配のファンがそれ耳にしたら大喜びだと思いますけどね。
「ああ……それやります! 確かに年配の方には喜ばれそうですね。それで言ったら、BREIMENの“IWBYL”(=〈I Wanna Be Your Lover〉の頭文字)は、曲自体は違うんですが、最後のサビのサックスのフレーズが実はプリンスの“I Wanna Be Your Lover”の歌メロのフレーズなんですよ。この(同じ)タイトルをつけるんだったらオマージュしたいなってことで、サックスでやってみたら、思った以上に誰にも気づかれなかった(笑)」