ついに怒涛のメジャー・デビュー決定! ただ、それでも挑戦はまだまだ続いて……燃え盛る誇りと反骨精神が衝突した先ではどんな未来が5人を待ち受けている?

 始動からおよそ2年……去る5月9日に行われた〈SOUL MEAT 2929 TOUR〉のファイナル公演にてメジャー・デビュー決定を報告したPIGGS。ただ、今後に向けての方針を話し合う過程で、制作チーム側とメジャー・レーベル側とで意見の相違があったため、インディーズでのラスト・シングルは〈#PIGGSメジャーへの挑戦〉と題したバトル企画に則って、TEAM A制作の『BURNING PRIDE/豚反骨精神論』とTEAM B制作の『豚反骨精神論/BURNING PRIDE』という2タイプでの同時リリースとなりました。A/Bのどちらがメジャー/インディーなのか詳細は伏せつつ、楽曲やアートワーク、衣装や振付け、MV、グッズに至るまでを両陣営がプレゼンし、ファン投票で支持を得た側がメジャー・デビュー作のプロデュースを主導するという趣向。バトルの先を見据えたこの試みについて、文字通りの岐路に立つ5人に話を訊きました。

PIGGS 『BURNING PRIDE/豚反骨精神論』 プープーランド(2022)

PIGGS 『豚反骨精神論/BURNING PRIDE』 プープーランド(2022)

 

5人でやればPIGGSになる?

――今回は〈TEAMインディー〉と〈TEAMメジャー〉がそれぞれのシングルで勝負する企画ですが、どういう経緯でこの試みに至ったんでしょう。

プー・ルイ「まず、某メジャー・レーベル担当のブタ山(仮名)さんには、去年4月のLIQUIDROOMに来ていただいてて、そこからライヴも何度か観てもらったり、打ち合わせも重ねていて。〈一緒にやりましょう〉って決まったのはEX THEATERの前後だったんですけど、そこから具体的に〈インディーズ最後のシングルをどうメジャーに繋げるか〉〈メジャー・デビューするにはどういう形がいちばん良いのか〉という話になった時に、私はそのままの制作チームでやるつもりで、ブタ山さんはそこも考えたいということで、お互いの前提が違ったから平行線の状態がけっこう続いて」

――そこは大きい相違点ですね。

プー「で、それを見兼ねた周りの方が〈そんなに平行線なんだったら、両方が良いと思うものを作って対決しちゃえば?〉って提案してくださって。まあ、こういう話ってどんなアーティストでも水面下であると思うんですけど、〈それを表立ってやるのは、いままで全部見せてきたプー・ルイならではじゃない?〉って言ってもらって、しっくりきました。私、そういう企画っぽいの好きじゃないですか(笑)」

――平行線になった時点で譲歩する考えはなかったですか。

プー「ん~、私はやっぱり当たり前に制作チームのこともメンバーだと思ってるんですよ。METTY(デザイン)もRyan.B(サウンド・プロデュース)もカミヤサキ(振付け)ちゃんも。だからこのタイミングで譲る考えはなかったですね。〈絶対!〉っていう」

――〈絶対〉であれば、破談にする選択肢もあったと思います。

プー「平行線が続いた時期はそれも思いました。でも、2年やってきて〈このタイミングでのメジャー・デビューはマストだね〉っていう共通認識はこっちのチームにもあって。何が正解かはわからないけど、やっぱりアイドルって大きくなっていく姿を応援したいコンテンツだと思うので、ファンの人たちも一緒に上がってくのが楽しいし、応援したくなるものだと思うから。それを考えるとやっぱりこのタイミングでメジャー・デビュー自体をやめる考えはなかったです」

――そこで間を取らないのがプー・ルイさんらしくもあるなっていう(笑)。

プー「はい(笑)。別にブタ山さんも〈このチームじゃダメ〉って言ってるんじゃなくて、〈こんなやり方もあるから提案してみたい〉っていう話で、逆に〈この人なら信用できるな〉っていう前提があるからこそのバトルだし、PIGGSのメジャー・デビューを盛り上げるっていう目的は一致してるんで、やる価値があるなと思いました。まあ、客観的におもしろそうな企画だなって思っちゃったので(笑)」

――そこに付き合ってくれるレーベルやチームで良かったですね(笑)。メンバーの皆さんはこの企画をどう捉えていますか?

BAN-BAN「ずっとやってきたチームの人とやるのが当たり前って思ってたし、その作品に共鳴してきたので、最初に企画を聞いた時は〈えっ、いなくなるかもしれないってこと? 嫌だな〉みたいな感情を抱きました。でも、それを嫌だって思うことにも違和感があって。それに気付いたのは実際にメジャーの方とも制作が始まってからなんですけど、いつものスタッフさんと離れて初めての方たちと制作をするなかで、メンバーだけだと凄く弱く感じて、制作チームの人たちの力がPIGGSのコアな部分だったのかな、みたいに思ってしまって。だから、離れるのが嫌って思うのは甘えだったんだなって気付きました。だから、これはバトルっていう構造になってるけど、そうじゃないというか。制作の面から良くするだけじゃなくて、メンバーもそこに追いついて全員で良くなるための企画だと思うから、私の気持ちとしてはバトルっていう感じはあんまりないです」

プー「でもファンの人には純粋に楽しんでもらいたいから、好きなほうに投票してほしいなっていう感じです」

SHELLME

――SHELLMEさんはどうでしたか?

SHELLME「私は企画どうこうの前に、とりあえず〈イェ~イ! めっちゃイェ~イ!〉みたいな感じだったんですよ。曲を聴いたり、衣装を見たりして、ひたすら楽しみな気持ちが大きくて。メジャー・デビューは夢だったし、〈もう凄い! 嬉しい!〉って。でも取材とか始まって、いろいろ話すじゃないですか。そしたら、〈えっ、みんなそんなこと考えてたの?〉〈私ヤバくない?〉って。それで何も言えなくなって、ぶっちゃけ他の取材ではBAN-BANの意見をそのまま言いました(笑)」

――どういう告白(笑)。

プー「別に合わせなくてもさ、グループなんだし、凸凹だからいいんじゃん(笑)」

SHELL「いや、こんなふうに考えれる奴もおるんやな……って。私は5人でやれば何でもPIGGSになるって思ってたんで」

――それでいいと思います。

プー「うん、それが正解になるように動けばいいだけだから、SHELLMEもそういう自分に覚悟を持てればいいと思うよ」

CHIYO-P「私はSHELLMEみたいにめちゃめちゃ嬉しいっていうより、不安になってましたね。PIGGSっていう殻はあるけど、マジ中身がすっからかんだなって自分に対して思って」

――すっからかんとは?

CHIYO「いままでずっと、いただいたものがPIGGSの形だと思ってやってきて、自分がPIGGSの形を作ってるわけじゃないというか。初めてメジャーの楽曲をいただいた時に、いままでのPIGGSとはもちろん違うもので、自分がそれを歌ったり踊ったりすることに自信をあんまり持てなくて。いまもまだ〈これで合ってるのかな?〉って、自分の中でまだモヤモヤした気持ちも若干あって……って感じです」

プー「暗っ(笑)」

CHIYO「言葉にすると暗くなっちゃう(笑)」

――考え込むとそうなってしまいますよね。KINCHANさんはいかがでしたか。

KINCHAN「最初にメジャー・デビューって聞いた時は〈PIGGSが大きくなっていくのかな、嬉しいな、お父さんとお母さんも喜ぶな~〉って思ってました(笑)。で、その後で企画の内容を知って、私はCHIYO-Pが感じる不安とはまた別の、新しいことが始まることへの個人的な不安でいっぱいになりました。新しい人と関わることも増えるから〈もっと愛されるグループにならなきゃ〉とか」

プー「レコーディングでも泣いたよね」

KIN「泣いてない。嘘、泣いた」

SHELL「一瞬パニックが起きた(笑)」

KIN「歌もヘタクソなんで、〈練習してきてないと思われたらどうしよう〉とか思ったままレコーディングに入っちゃって。自分のことでいっぱいいっぱいになってました」

プー「メンバーも悩んでるけど、制作チームのみんなも常々〈レヴェルアップしなきゃね〉って言ってて。この企画を通して、みんながもう一度〈PIGGSの中の自分って何なんだろう?〉〈PIGGSの軸って何だろう?〉って考えるっていうことなんです。メンバーとしての立場だけで言うと、ぶっちゃけ軸があれば別に誰の曲を歌ってもPIGGSになると思うんですよ。どんな曲であっても意味を持たせられるようにするのがメンバーの仕事で。それぞれが自分自身をはっきり持っていれば、どんな曲を歌ったっていいし。いまはそれを見つける時期なのかなって」

KIN「前から〈ブレないものを持ちなさい〉ってたくさん言ってもらってて、それを本当に考えないといけない時が来たんだと思います」

――そう考えれば、良いタイミングでの企画なのかもしれませんね。

プー「何も持たずにメジャーに行くほうが恐ろしいので。客観的な立場からすると、普通にバトルせずにチーム守れとも思うし、周りの方々も常々〈プー・ルイがやりたくないことをやっても意味がない〉って言ってくださってるから、もっと時間をかけて話して〈絶対このチームじゃなきゃダメ〉って通すこともできたとは思うんです。そうしなかったのはTEAMインディー側の意向でもあるし、メジャー・デビューって嬉しいけど怖いものでもあるから、ここで我を通すより、こうやってお祭り騒ぎをして、できる限りみんなの納得する形でドーンッとメジャーに向かっていきたいっていう感じです」