問答無用の実績を積み重ねてポップ・シーンに絶大な影響力を発揮し、説明不要なヴェテランとなったニーヨ。新たなリスナーたちからの再評価でも賑わうなか、現在進行形の彼は何を表現するのだろう?
多方面からの再評価
アルバム4枚を残したデフ・ジャム時代の華々しい印象が強いものの、2012年に籍を移したモータウンでのキャリアのほうがもう長くなっているニーヨ。初作『In My Own Words』(2006年)の15周年記念盤が昨年リリースされたことを思えば時の流れを感じざるを得ないし、代表曲のひとつ“Because Of You”(2007年)がTikTokなどのダンス・チャレンジ動画に使用されてバズる形で再脚光を浴びたのも往年のリスナーを驚かせたかもしれない。そうした偶発的な盛り上がりを例に挙げなくても、キッド・ラロイの“NEED YOU MOST (So Sick)”(2020年)やランドスケープの“Turn Off The Radio”(2021年)、フリード × DJカッチの“So Sick”(2021年)、ケイ・ワン × マイク・シンガーの“Du gehst nicht aus meinem Kopf”(2022年)など、近年は“So Sick”(2005年)や“Sexy Love”(2006年)、マリオに書き下ろした“Let Me Love You”(2004年)などのクラシックがハウスやヒップホップ、レゲトンなど多方面でカヴァー/リサイクルされている例もたびたび目にすることはできる。そうした仕事がポピュラリティーのある共有財産として機能していること自体、彼が00年代を象徴するポップ・スタンダードを数多く残してきた事実の証明となるだろう。
ただ、説明不要な存在になったとはいえ、もちろんニーヨは現在進行形のアーティストである。かつてのようにソングライターとしてもヒットを量産しまくっていた頃のペースではないものの、自身の歌を作って表現するというアーティストとしての活動ペースはしっかり保ち、コンスタントな作品リリースによってスウィートな歌世界を届けてくれている。