
塩谷邦夫(TOWER VINYL SHIBUYA)
ユーミン。初めて好きになった曲は“守ってあげたい”。でも当時、「ねらわれた学園」を映画館で観たけれど、スクリーンから流れた記憶はもうないんです。
そのあとは“ダンデライオン”に“時をかける少女”。そうなんです。薬師丸ひろ子さんと原田知世さんのファンだったんですね。だからなのかどうなのか、今でも“ダウンタウン・ボーイ”や“Hello, my friend”なんかのブルーミント系の曲にグッときます。
長門芳郎さんによる「パイドパイパー・デイズ」や林美雄さんを書いた「1974年のサマークリスマス」を読んでいてもユーミンの青春期のエピソードが出てくると嬉しくなってしまう。
〈エンジンフードで卵が焼けるほど~〉とか〈MORIOKAという、その響きが~〉とかそんな言い回しをいつか普通に使える大人になれると思いながら早30年以上経ってしまった……。死ぬまでに『Yumi Arai The Concert with old Friends』をアナログレコードで聴きたいなー。
後藤博子(渋谷店)
家族で出掛ける時、カーステレオから流れてくる“ルージュの伝言”。かわいい曲に姉と一緒に車の中で歌っていた記憶が、ユーミンとの最初の出会いでした。“ひこうき雲”や“卒業写真”など、ユーミンは父が編集してくれたカセットの中にいる人で、当時の幸せな時間とともある音楽でした。
物心ついた時には、リリースのたびにヒットチャートを圧巻する女王のような存在で、小学校の時に聞いた“Hello, my friend”は歌詞の意味はわからなくとも切なくて、繰り返し聞きたくなる曲。
高校の頃の着メロはずっと“ANNIVERSARY”だった私が、自分の人生を形成する上で、さらに大切なアーティスト様になったきっかけは、20代で聞いた“朝陽の中で微笑んで”でした。苦しくも必死に恋をしていた20代、ユーミンの曲に励まされ、泣きながら、ともに生きていたと思います。
そこから、少しずつオリジナルアルバムを聞いて、現在30代後半になって振り返った時、周りの人や自分に対して、以前よりちょっとだけ許せるようになったのは、ユーミンが色々な事を教えてくれたおかげだな、と思っています。この先年齢を重ねて、40代50代になっても、ユーミンを聞き続けられる人生でいたいと思います。
時間が経っても輝く人でありたいと思えた事、雨が好きになった事、安いサンダルは履かない事。
“時のないホテル”は衝撃的だし、“静かなまぼろし”はいつ聞いても切ない。色んな感情や、想像する世界が、自分の中でひとつずつ積み重ねられていて、それをこれからも大切にしたいと思っています(最近は“晩夏(ひとりの季節)”がお気に入り)。
色んな事があり、これからも乗り越えなければいけない壁はありますが、年始に立てた目標の一つ〈山手のドルフィンでソーダ水を飲む事〉を掲げた私は、ユーミンを聞きながらであれば頑張れそうな気がします。
機会があればぜひ、CDやLPで聞いてみてください。目に見える大切なものとして保管していく事も、自分の重ねた人生が見えるようで、良いですよ。
松本創太(渋谷店)
私にとってユーミンの原体験はやはり父の車で流れる音楽。飛行機の音で始まり飛行機の音で終わる『COBALT HOUR』がお気に入りでした。
そして時は流れ中高生になり、手に入れたiPodに父のCDを片っ端から取り込んでいく中で〈再会〉したのです。タイトルチューン“COBALT HOUR”から“卒業写真”への細野さんのふり幅、そして“雨のステイション”の細野さんに驚愕。ブリブリのファンクチューンから、幻想的でのびやかでささやかに主張する様はまさに〈必要にして十分〉。
そこで出会ったティン・パン・アレーの面々やリーランド・スカラー、さらに〈松任谷〉時代を支える松原正樹氏などそこから広がった音楽人脈は数知れず。ユーミンが教えてくれた音楽や音楽人の数々が、現在の私の音楽志向の基礎を築いてくれている気がします。
ちなみにこの話を母にしたところ、幼少期、父の車で出かけた日の夜、私は“雨のステイション”を度々熱唱していたとのこと。無意識ながらに細野さんに感化されていた?わけではないと思いますが、音楽を全く知らない子供も、そして大人になっても常に魅了し続けてくれるユーミン。皆様もご自身の思い出の中のユーミンエピソードを思い出しながらベストをお楽しみください。
(個人的には新曲“Call Me Back”で松原正樹氏のギターが聴けるのがうれしい!)