待望のニューアルバム『(エン)』のリリースとライブハウスツアーの開催を控え、イベント出演などで西へ東へと大忙しのRYUTist。そんなRYUTistの宇野友恵さんによる本の紹介連載が、この〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。今回は、シンガーソングライター・二階堂和美さんの書籍「二階堂和美 しゃべったり 書いたり」を紹介。ライブでどんなふうに歌い、表現すればいいのか、思い悩む友恵さんは、二階堂さんの歌い手としての圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにし、この本を読んだことで、大きなヒントを得られたようです。 *Mikiki編集部

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〈今、目の前にいるこのひとりの喜ぶ顔が見たいからやる感覚を忘れちゃだめだと思ったの。目の前のことしか見えてないって言われるかもしれないけど、遠くばっか見て、途方に暮れてるのもしょうもないし。〉
あの日のライブを思い出しながら、噛み締めるように読みました。

 

〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第16回目は、二階堂和美さんの「しゃべったり書いたり」をご紹介します。

二階堂和美 『二階堂和美 しゃべったり 書いたり』 編集室屋上(2011)

9月29日、閉店した北書店さんで本当の本当に最後のイベント、二階堂和美さんのライブがありました。
この日は今年亡くなった二階堂和美さんの夫・ガンジー西垣さんの月命日で、ちょうど半年が経ったそうです。

お片付け途中の、広くなった北書店さんで、演奏の合間にガンジーさんとの思い出が語られながら、進んでいくライブ。
ゆっくり丁寧に、言葉を紡ぎ、うつくしい歌声で歌う二階堂さんの演奏に、そこに集った全員が静かに耳を傾けていました。

二階堂さんの歌は生きて聴こえてきました。
どこから声が出ているのか、どうやって歌ってるのか、もはや同じ人間なのか。
響いて響きまくっていました。
声量や技術の凄さもずば抜けていながら、それを超えて、歌詞が言葉として直で伝わってきて、真の歌の力を体感しました。

 

RYUTistではここ数年、リリースのたびに〈この難しい曲をライブでどう再現するか!〉というところを念頭に練習をはじめています。
ありがたいことに〈難しいのによく歌えるね。〉とライブ後に褒めていただけたりすることもあって、私は単純だから〈あぁ頑張ってよかった!〉って満足しちゃいそうになるんですが、それではダメじゃないですか。
歌とダンスをバランス良くできただけで、ゴールはそこじゃないんです。
二階堂さんの歌を聴いた時、本当に感動して、こんな風に心で歌えるようになりたいな、と思いました。

 

前回、〈ライブが好きな自分に全力で向き合っていきます。〉と綴ったあとの〈古町どんどん2022秋〉さんでのライブは、かなり気合いが入っていました。

大事なのは気持ちだ。気持ちが一番。身を削ってでも歌うぞ!と意を決してステージに向かいました。
でも、結果として、ただ自分の感情を押し付けていただけでした。
〈あれ、なんか違うなぁ。間違っちゃったなぁ。〉
喜怒哀楽を最大限に表現できたら心を揺さぶるライブができるんじゃないかと思っていたのですが、町の楽しいお祭りステージで、〈怒〉と〈哀〉を強く出して、お客さんに〈心配になった〉と言われたら、納得せざるをえません。

 

痛い人間になってしまったなぁとショックを受け、答えを求めるように読んだ
「しゃべったり 書いたり」。
僧侶の資格を持つ二階堂さんが、法話の場面と音楽家として活動をする上での類似点について
〈お客さんの反応を見ているうちに「みんな自分自身を見てるだけなんだなあ」って、すごく感じ始めて。〉
〈私を見ているようで、そこに自分の姿を写して戻しているだけ、というか。私という対象を通して、その人が自分自身を取り戻していく。そのきっかけを与えられたら成功だと思う。〉
とおっしゃっていました。
アイドルをはじめた当初から自己表現を重要視していた私にとって目から鱗でした。

心で歌うって、自分の感情を押し付けることじゃないんだな。
その場にいる全員と心を共有したいと思いながら歌うことなんだなって悟りました。
ひとりひとりに寄り添いたい。
〈目の前にいるこのひとりの喜ぶ顔が見たいからやる感覚〉を忘れないで、ライブに尽くしていきたいです。