Photo by Noriyuki Soga

小曽根真、ブランフォード・マルサリスたちとの熱い絆を語る

 日本を代表するピアニスト小曽根真が、『小曽根真スーパー・カルテット/A Night in Tokyo』をリリースした。これは2013年12月の〈小曽根真クリスマス・コンサート〉での、ブランフォード・マルサリス~クリスチャン・マクブライド~ジェフ・”テイン”・ワッツとのカルテットのライヴを収録したもの。リリース直後の5月17日・18日には、この4人の10年ぶりの再会コンサートが、サントリーホールと兵庫県立芸術文化センターで開催される。小曽根真に、彼らとの熱い信頼関係を語ってもらった。

小曽根真スーパー・カルテット 『A Night in Tokyo (Live at Bunkamura Orchard Hall 2013)』 Blue Note/ユニバーサル(2023)

 

――『A Night in Tokyo』を聴いて、実に凄まじい演奏に圧倒されてしまいました。

「コンサートというよりも、2000人の観客を集めてやったジャム・セッションみたいでした(笑)。録音をして一度ミックスしたのですが、ブランフォードが〈俺がミックスしたい〉というので音源を渡したんです。でもずっと音沙汰がなかったので、あまり気にいらなかったのかな、と思ってそのままにしていたら、去年彼から突然連絡があって、〈いつミックスするんだ?〉と。こっちはその連絡を10年ほど待っていたんだけど(笑)。その時には5月にやるカルテットのコンサートが決まっていたので、せっかくだからそのタイミングで出そうよ、ということで、ブランのスタジオでミックスを行いました」

――しかしこの演奏、特に1曲目“エンカウンター”の迫力にはたまげました!

「あはは、僕がジャズ・ピアニストだということを、皆さんに思い出していただこうと思って(笑)。エネルギーの塊みたいなこの3人と一緒にやると、初めて会ったあの頃に戻るというか、自分のジャズ魂がガッツーンとはじけていくんです」

――小曽根さんとブランフォードやテイン・ワッツは、バークリー時代からの友人なんですね。

「1980年でした。バークリーに行ったはよいが英語がほとんど話せない。なんとかセッションに呼んでもらうために、ピアノ・ルームで派手な練習をしていたら、ティムという背の高い生徒がやってきて、付いてこい、って言うんですよ。おそるおそるアンサンブル・ルームに行ったら、そこにはまだ19歳だったブランフォードやテイン、ウォレス・ルーニーとか、のちに有名になる彼らが集まってセッションをやっていた。最初に演った曲が“I’ll Remember April”。僕が子供の頃からレコードで聴いて憧れていたあのグルーヴが目の前で演奏する彼らから押し寄せてきて、これだ!と思いました。それでブランが僕を気に入ってくれて〈ギグをやるか?〉って訊いてきたので〈イエス〉と答えたのですが、実は僕は〈ギグ〉の意味がわかっていなかった(笑)。それである日の晩、寮の部屋で宿題をやっていたらブランから電話がかかってきて〈今日ギグだって言っただろ!〉と。〈ギグって何?〉〈仕事だよ! 10分で来い!〉(笑)」

――それはいいお話ですね! そして小曽根さんはブランやテインたちとずっとギグを重ねたわけですね。

「毎週金曜の仕事で、1曲20分ぐらいはやってたかなぁ。とにかくグルーヴとスタミナですよね。みんなの魂の波動が共鳴してスパイラル状に旋回していく。それを体験してしまった僕には、もうあのエネルギーを感じないといつも物足りなく感じるようになってしまって」

――ミュージシャンには色々なタイプがいますが、彼らは特別なんですね。

「僕はもともとディキシーランド・ジャズやブルースから始まっているので、その言葉を話せるミュージシャンが好きなんですね。ある時クリスチャンとテインとのトリオで、僕がコテコテにブルージーなソロを弾いたら、クリスチャンから〈おまえはどこの教会で育ったんだ?〉と言われました。あれはちょっと嬉しかったですね」

――さて、5月には10年ぶりの4人の共演が実現します。どんなコンサートになりそうですか?

「アルバムからの曲と、あと彼らの曲もやりたいな、と思っています。4人とも10年を経て経験を重ねていますので、このアルバムとはまた違った演奏になるんでしょうけど、でもやっぱりエネルギーの塊みたいな演奏にと思います(笑)」

――そうですよね。とても楽しみです!

 


小曽根真(Makoto Ozone)
1983年バークリー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業。同年米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム『OZONE』で全世界デビュー。以来、ソロ・ライブをはじめゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス、パキート・デリベラなど世界的なトッププレイヤーとの共演や、自身のビッグ・バンド〈No Name Horses〉を率いてのツアーなど、ジャズの最前線で活躍。2021年3月には還暦を迎え、全国47都道府県でOZONE 60プロジェクトを展開する。映画音楽など、作曲にも意欲的に取り組み、多彩な才能でジャンルを超え、幅広く活躍を続けている。

 


LIVE INFORMATION
小曽根真 スーパー・カルテット
2023年5月17日(水)東京・赤坂 サントリーホール
開演:19:00
2023年5月18日(木)兵庫・西宮 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
開演:19:00
出演:小曽根真(ピアノ)/ブランフォード・マルサリス(サックス)/クリスチャン・マクブライド(ベース)/ジェフ・“テイン”・ワッツ(ドラムス)
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