満を持してのセカンド・アルバム、小曽根真プロデュースで念願のニューヨーク録音!
俊英トランペッターの松井秀太郎が、セカンド作となる『DANSE MACABRE』をリリースする。音大時代の恩師である小曽根真の若手登用プロジェクト〈From OZONE till Dawn〉に参加し注目を集めるようになった彼だが、順調にリリースされる新作『DANSE MACABRE』は小曽根真プロデュースによるニューヨーク録音作だ。精鋭たちとお手合わせした同作は、2管編成のカルテットで竹を割ったようにレコーディングされた。贅沢な設定による第2作は、どのように作業が進められたのか。また、その経験は彼に何をもたらしたのか。その年齢(1999年生まれ)とは相容れない、思慮深い受け答えをする彼にいろいろ問うた。
――トランペットという楽器は、どういうところが自分と合ってると思いますか。
「いろんな魅力に惹かれてきたんですけど、口でいろんなことを変化させたものを楽器に伝えるという所ですね。金管楽器は出したい音が自分の体と直結し歌を歌うような感じ出せるのが魅力です。自分は楽器を吹くというよりも、歌を歌うイメージで演奏していますから」
――デビュー作『STEPS OF THE BLUE』(2023年)は、今振り返るとどういうアルバムだったと思っていますか。
「出したのは大学卒業し1年後くらいなんですけど、録音したのは2ヶ月後とか3ヶ月後だったんです。その時の自分のバンドで、できることは全部やったと思います。その時に生まれたものを大切にという気持ちで、ほとんど1か2テイクで録りました」
――早速、新作のことをお聞きします。アメリカ録音ですね。
「ファースト・アルバムを録った後から、次は向こうで録れたらいいねと小曽根さんとしてはたんですけど、まさか実現するとは思いませんでした」
――素晴らしい奏者が、レコーディングには集まりましたよね。ベースのベン・ウルフとサックスのウォルター・ブランディングはウィントン・マルサリス(注:松井の一番好きなトランパッターが彼)絡みの奏者ですよね。
「ウィントンのバンドでの演奏で大好きになった、ウォルター・ブランディングには入って欲しかったんです。自分の希望です。他のメンバーは、小曽根さんと相談しながら決まりました」
――ピアノのガイ・モスコヴィッチ(1996年生まれ)は若いですが、今アヴィシャイ・コーエン(ベース)お気に入りの奏者ですよね。
「その前にも日本に来られたので、会ったりもしました。彼はすごい独自の世界観のもといろんなことができ、もともとはクラシックをやられていたこともあり、一緒にやってみたいなと思いました」
――参加者の中では、ドラマーのジョナサン・ブレイクが一番売れっ子かもしれません。ソロとしてもブルーノートからアルバムを出していたりもしますし、だからよく捕まえたと思いました。
「奇跡的に連続5日間が空いてたようで、うれしかったです。この5月に2日間リハーサルし、3日間で録音しました」
――実際、作業はどんな感じで進んだのでしょう?
「びっくりしたのは自分が送ったデモと楽譜をかなり読んできてくださっており、すでに体に入っていたことでした。全員始まった時から、〈ここはどうする〉みたいな感じだったんです。スムースに進みつつ、一緒に音楽を作っているという部分がすごかったです」
――基本オリジナル曲で固めたいという気持ちはあったんですよね。
「そうですね。基本的にはそうです」
――いろんな曲が入っていますよね。黄金期ブルーノートのクインテット表現を思い出させるものもあれば、もっとコンテンポラリーな曲もあります。また、ニューオーリンズ・ジャズ調もあれば、ピアノとデュオでしっとりと行く曲もあります。やはり、いろんな表情を提示したいという気持ちはありましたか?
「一つのジャンルに固執したくはないですし、アルバムにはいろんな曲があるといいなと思います。その曲ごとにそれぞれ世界観があり、出したい音があるんです。そして、全体を通して自分を出せたらと思いますね」
――参加奏者たちに、曲ごとに背景説明のようなものはしたのでしょうか? バンドの音になっているなとも思わせられるわけですが。
「説明をしようと思ったんですけど、説明をしなくても良かったことがすごく多かったです。ですからこうしてくださいっていうよりは、みんなで〈こうしようよ〉というのが集まった1枚だと思います」
――それから、クラシック作品、サン=サーンスの“DANSE MACABRE”も取り上げています。
「もともと、とても好きな曲だったんです。それで今回どうせ行くんだったら、わがままにこのメンバーとやってみたいと思い取り上げました。まさかアルバム・タイトルにまでするとは思っていなかったんですが、やってみて自分たちの解釈ですごいエネルギーを生んでいるのでそうしました」
――今回の第一線の奏者たちとこういうCDをモノにしたいうのは、大きな自信にもなったと思います。また、今後はこういうこともしてみたいという欲求も広がったのではないかとも思います。
「そうですね。やっぱり自分もNYの彼らのようなミュージシャンになりたいと思います。彼らはちゃんと音楽をするということを本当に大切にしていますね。そして、自分もそこを大事にして活動していきたいです。何をやっていても、どんなジャンルをやっても、それを大切にできればいいんだと思えたので、本当にいろんなことに挑戦してみたいという気持ちが強くなりました。自分の今の音楽を突き詰めていくこともそうなんですが、いろんな人と共演するのをはじめ、様々なことにチャレンジしていきたいです」
――『DANSE MACABRE』の曲を松井さんの今の日本人のバンドで開くと、どういうふうになるかというのも楽しみです。来年2月に、新作をフォロウするライヴもありますね。
「普段からよく一緒にやっている同世代のメンバーで、ステージに向かう気持ちを共有できるんですよ。自分がいい演奏をできればいいとかではなく、ステージで一つの作品を作るのを一緒にやってくれるメンバーなんです」
松井秀太郎(まつい・しゅうたろう)
1999年東京都国立市生まれ。幼少期より独学でピアノを、9歳よりトランペットを始める。国立音楽大学附属高等学校を経て同大学ジャズ専修を首席で卒業。矢田部賞受賞。
高校ではクラシックを専攻し、同校附属オーケストラとコンチェルトを共演。日本モーツァルト青少年管弦楽団トランペット奏者として活動。同大学入学を機にジャズ専修へ転向し小曽根真、エリック・ミヤシロ、奥村晶らに師事。Newtide Jazz Orchestra のリード・トランペットを担当。在学中より自身のジャズ・コンサートやBLUE NOTE TOKYO ALL STAR JAZZ ORCHESTRAへの参加、HYDEのコンサート・サポート等、本格的にプロ活動を始める。小曽根真と神野三鈴によるプロジェクト From Ozone Till Dawnに参加し、小曽根真との共演でPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)やブルーノート東京等に出演。2022年、テレビ朝日「題名のない音楽会」に今注目すべきアーティストとして出演し注目を集める。同年11月1st Single“Neapolitan Dance”を配信。2023年7月、『STEPS OF THE BLUE』にてCDデビュー。ソロ活動の他に米津玄師の楽曲“LADY”に参加するなどアーティスト・サポート、スタジオ・ミュージシャンとしても幅広く活動。
LIVE INFORMATION
松井秀太郎 Concert Hall Live Tour 2025
2025年2月15日(土)金沢・石川県立音楽堂 交流ホール
開演:18:00
2025年2月21日(金)長崎・アルカスSASEBO中ホール
開演:19:00
2025年2月23日(日)福岡・FFGホール
開演:14:00
2025年3月1日(土)札幌・札幌コンサートホールKitara 小ホール
開演:14:00
2025年3月14日(金)東京・サントリーホール ブルーローズ
開演:19:00
2025年3月23日(日)横須賀・ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
開演:14:00
2025年3月28日(金)名古屋・電気文化会館 ザ・コンサートホール
開演:18:45
2025年3月30日(日)大阪・住友生命いずみホール
開演:14:00
2025年4月5日(土)東京・サントリーホール ブルーローズ
開演:14:00
出演:松井秀太郎カルテット:松井秀太郎(トランペット)/壷阪健登(ピアノ)/小川晋平(ベース)/きたいくにと(ドラムス)