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“Damn”はひとつの到達点

――PVもクリストファー・ノーランの映画「メメント」から着想を得たという、インパクトあるものとなっていますね。

桂佑「僕は映画が好きなんですけど、歌詞も『メメント』をモチーフにしています。数分しか記憶が保てない主人公が、ずっとイライラしている感覚。あの目まぐるしさを楽曲にも歌詞にも反映させています」

『DAMNED』収録曲“Damn”

Ray「この曲は最初に聴いたときから、リードトラックで間違いないと思っていました。そのくらい印象に残っています」

太輝「本人はどう思っているのかわからないけど、僕らメンバーからすると、“Damn”はひとつの到達点なんじゃないかな。そのくらい、完成度の高さを感じました」

Ray「ギタリスト目線でいうと、桂佑さんの作る曲はギタリストの考えるものではないというか、セオリーから外れているというか、自分にとって新鮮なものがたくさん入っているんです。テンポチェンジとか拍子の上手いこと上手いこと……。変態なことをしているけど、キャッチーに聴こえるようなフレージングとかが盛り込まれている」

桂佑「僕もともとギタリストなんですけどね(笑)」

Ray「だから面白いんやと思う。なんか、語彙力がないから日本語がマジまとまらん。間違いなくリードトラックにすべき曲だと思っていました。

(ギターの)機材でいうなら、ピッチシフターを使ってのギターソロも特徴といえばそうですね。あれもデモの段階で入ってましたよね?」

桂佑「入ってた」

愛朔「(ピッチシフターは)最近のメタルのトレンドだと思うんですけど、そういう要素を盛り込んだり、面白い展開だったり、新しい挑戦だらけでメジャーデビューにはふさわしいんじゃないかな」

幹太「この曲は本当に時間がかかったというか……。桂佑さんと揉めたとまではいかないですけど、わりと長々とやりとりして作ったドラムですね。

最初にデモを聴いたときは、曲の意図やコンセプトが全然つかめなくて、〈どういう気持ちでドラムを演奏したらええんやろ?〉と悩みました」

桂佑「もちろん、喧嘩したとか仲が悪いとかではないんですよ(笑)。説明すると、幹ちゃんから最初に来たのが〈アンパンマンの世界観で北斗の拳のケンシロウが暴れてる〉みたいなドラムだったというか……。これは伝わらんな(苦笑)」

太輝「桂佑くんの求めているものと違うドラムを、幹ちゃんがつけてきたという?」

桂佑「そう。だから〈これは違うんじゃね?〉と本人に伝える前に、幹ちゃんなりの考えがあるだろうと何度も聴き込んでいたんだけど、それでもわからなかったので、LINEで確認したんです。ここが一番時間がかかったかもしれない」

幹太「めっちゃ熱くなりましたね、終わることのないLINEのやりとりが(笑)。PV撮影前の打ち合わせのときも、いろんな資料を見せてくれて、曲の世界観やストーリーを僕らに共有してくれたじゃないですか。だから、僕的には曲のストーリーを重視してつけたドラムで、理論的にはだいぶ外れてるんです。だから桂佑さんは違和感を覚えたのかもしれない」

桂佑「〈ここではストーリー展開も慌ただしくなっているからこんな表現にした〉とかすごく細かく送ってくれたんです。『メメント』から着想を得たとはいえ、僕の考えたストーリーを解釈してくれて、フレーズを考えてくれたことは嬉しかった。その上で〈曲単体で聴くなら、俺はここはこうしたほうがいいと思う〉とか、やりとりを重ねていった結果、落とし所が見つかったという」

幹太「“Damn”もそうなんですけど、桂佑さんの音楽っていうのは、実験的というか、今世の中にあるものとか、流行にのっかってそれっぽいものをつくるのではなくて、自分の中の世界観を表現するために曲を作っているのだと僕は考えていて」

太輝「天才や」

幹太「だからこそ、〈○○っぽい〉ではなくて、桂佑さんが作っている世界観を理解してフレーズをつけたかったんです」

桂佑「その結果、完成したドラムのフレージングのほうが全然かっこいいですね」

太輝「さっきも言ったように本当に完成度の高いものになりました。でも、僕も最初にデモを聴いたときに、この曲を(リスナーが)どのくらい受け入れてくれるか、正直不安があったんです。そこに関しては本人とも話あったんですけど。

でも完成した曲を聴いて〈これが桂佑くんの表現したかったことだったんだな〉と感じ、そこまで汲み取れなかった自分自身への浅はかさみたいなものを反省している部分もあります。バンドのこれまでとこれからを考えるきっかけになった曲でもあります」

――太輝さんは、バンド全体を俯瞰してみてらっしゃいますよね。

太輝「僕自身はどちらかといえば、メロディーありきの音楽をルーツにしているんです。これは語弊があるかもしれませんが、DEVILOOFに入るまではエクストリームミュージックとは馴染みが薄かったので、客観的にみているかもしれません。とはいえ、メンバーなので100%俯瞰的にみることはできないのだけど。

〈デスボイスが苦手な人でも聴けるデスボイスの曲ってどんなものなのだろう〉みたいなことを考えることもあります。一見激しくて敷居が高そうだけど、聴いてみたら意外とキャッチーだった、みたいな部分もDEVILOOFの良さのひとつだと思うので」

――メロディアスな楽曲・クリーントーンのボーカル=キャッチーではないですもんね。