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おしどり夫婦それぞれの24年間

 2000年のEBTGの解散理由には、ビッグになっていく状況への違和感や、育児のためなどが挙げられる。そうした背景ゆえ、以降のふたりの活動も華々しさと距離を置いていた印象があり、ベンは2003年に設立したレーベル、バジン・フライを拠点にハウス界隈での活動に注力。トレイシーは客演したティーフシュワルツの“Damage”(2005年)をヒットさせるも、当初の音楽活動は控えめで、2007年にソロ2作目『Out Of The Woods』をリリースした。

 トレイシーの2010年作『Love And Its Opposite』からのシングル“Night Time”では、The xxのカヴァーにあたる表題曲でベンが参加。2012年の『Tinsel And Lights』は、バジン・フライのサブ・レーベル、ストレンジ・フィーリングからリリースされた。2017年にはイワン・ピアソンをプロデューサーに迎えて、ダンサブルな『Record』を発表。ベンは2014年にレーベル運営とDJを休止。シンガー・ソングライターへと立ち返ってリリースした2014年の『Hendra』以降の3作は、ジャジーでブルージーな歌もの盤として、いずれも評価が高い。

 また両者は文筆家としても成功。トレイシーの自伝2冊は日本でも出版されて話題を集めていたが、彼女がゴー・ビトゥイーンズのリンディ・モリソンとの友情を通し、音楽シーンにおいて女性であることを掘り下げた「My Rock ‘N’ Roll Friend」(2021年)、ベンが闘病経験を綴った「Patient – The True Story Of A Rare Illness」(96年)あたりの邦訳も期待したいところだ。 *田中亮太

左から、トレイシー・ソーンの2013年の著書「安アパートのディスコクイーン - トレイシー・ソーン自伝」(ele-king books)、トレイシー・ソーンの2018年作『Record』(Merge)、ベン・ワットの2014年作『Hendra』、ベン・ワットの2020年作『Storm Damage』(共にUnmade Road)