メジャー・デビュー以来続けてきた、数学記号をタイトルに冠した〈マスマティックス・プロジェクト〉もついにこの作品で最後。シリーズ4作目となる新作はザ・ナショナルのアーロン・デスナーがプロデュースを務め、いくつかの曲ではソングライティングにも参加している。本人に起こった悲しい出来事を背景に制作されたこともあってポップな楽曲はほとんどなく、アレンジもシンプルで全体的に内省的でシリアスな内容。ゆえに歌声とメロディーは心の叫びを表現したような生々しさがあり、これまでの作品とは違う儚さと美しさを放っている。彼のシンガー・ソングライターとしての意地とプライドを示したような作品だ。