数学シリーズの総括ツアーを経た2年ぶりのアルバムは実に明るい印象。ペルシャ音楽の影響を受けた“Azizam”やインドの要素を投影した“Sapphire”といった異文化アプローチも彼らしいマイルドさで、多彩なリズム・トラックとの縁に活力を得た構成は『=』(2021年)の延長線上にあるものだ。全編の制作はイリヤとジョニー・マクデイド、サヴァン・コテチャらのチームが中心。要所でサーカットやフレッド・アゲインが助力し、ラップの作詞をデイヴが援護、マックス・マーティンがベースだけ弾いていたり、ソウル調の“The Vow”でラリー・ゴールドを管弦アレンジに迎えるなど、さりげない贅沢も光る。