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変化を求めていた

 そうして生まれた『My Soft Machine』の明快な特徴は、まず制作陣の変化だ。前作『Collapsed In Sunbeams』の大半を共同制作したジャンルカ・ブチェラッティは不参加で、その結果として前作のネオ・ソウル~オーガニック・ソウル的な肌触りからアレンジの幅は大きく広がった。一方、前作で“Too Good”などを手掛けていたポール・エプワースは関与の度合いを増し、他にはロミル・ヘムナニ(ブロックハンプトン)やベアード、アル・ハグら初顔合わせの面々がプロデューサーに名を連ねていて、多くは現在の拠点であるLAで出会った面々と思われる。環境の変化が及ぼしたものは想像以上に大きかったようだ。

 「ずっとロンドンで暮らしてきたから、自分の中に抑えきれない衝動と冒険心のようなものが湧き起こってきて、新しいきっかけになるような変化を求めていた。LAに移ったことは、そこで出会った人たちやクリエイション的に新しい一歩を踏み出していくうえで自分が人生において下した最適な決断のひとつかもしれない。自分にとって新たな景色が開けたみたいに感じられる、と同時にすごく自分に馴染むというか、ここに自分のホームと呼べる場所があることが幸せ」。

 もちろん、そうした変化を触媒とする作風の変化がアーロ自身の意図したことなのは言うまでもない。「どちらのアルバムも根っこの部分では一緒の気がしてる」と言いつつ、前作と比較した新作のモードについてはこう説明する。

 「書いている内容に関しては、今回の『My Soft Machine』は一人称の〈私〉の視点から語られていて、それって物凄く単純だけど、自分にとっては物凄く勇気の要る大胆な行動だった。『Collapsed In Sunbeams』はどちらかと言うとキャラクターを中心に描かれていて、大人になることをテーマにしつつもプロダクションは最小限に抑えている感じだったけど、今回のほうがサウンド的には大胆に出ている感じ。バーンと盛り上がる場面だとか、温かくて感傷的な瞬間を入れたくて、それによって自分の中にある前作とは違う面を掘り起こしてみたかった」。