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絶賛を浴びて数々の賞に輝いた『Collapsed In Sunbeams』から2年、ロンドンの生んだ新世代の才能が待望の2作目を完成。内なる葛藤に向き合いながら視野を広げた歌世界は、さらに自由で鮮やかな光を放つ!

成長と進化

 「グラミーにノミネートされたことも、ブリット・アワードやマーキュリー・プライズを受賞したことも、自分の中ではまだ完全に消化しきれていなくて。嬉しい、誇らしいという気持ちがある一方で、あまりにも大きすぎて受け止めきれない、みたいな。何となくいい感じではあるし、自分の音楽がきちんと受け止めてもらっていると感じられる一方で、あまり真に受けないようにしてる。自分の作品がそれによって影響されるようなことがないようにね」。

 2021年を代表する作品のひとつとなったファースト・アルバム『Collapsed In Sunbeams』がどれほど評価されたかを改めて記す必要があるのかどうか、当時20歳だったロンドン生まれのアーロ・パークスが作り上げた傑作は、ビリー・アイリッシュからミシェル・オバマまでが支持を表明するに至り、グラミー賞に2部門でノミネートされたほか、ブリット・アワードの最優秀新人部門やマーキュリー・プライズを受賞している。その後のアーロはビリー・アイリッシュやハリー・スタイルズのツアーでオープニング・アクトを務め、昨年は〈グラストンベリー〉や〈フジロック〉にも出演。その傍ら、ユニセフの史上最年少サポーターに選ばれ、英国のメンタルヘルス・チャリティー組織であるCALMのアンバサダーも務めるなど、社会活動の面でも活躍の幅を広げてきた。

ARLO PARKS 『My Soft Machine』 Transgressive/BIG NOTHING(2023)

 とはいえ、そうした周囲の変化もありつつ本人がブレずに創作に臨んだことは、およそ2年ぶりに届いたセカンド・アルバム『My Soft Machine』の出来映えからも明らかだろう。“Weightless”などの先行シングルからも窺えたサウンド面の大きな変化は、よりパーソナルな視点と共に主役自身の成長と進化をアルバムに深く刻み込むこととなった。実際に曲作りのスタートは前作を出す前の2020年冬まで遡れるそうで、その後はツアーの合間に時間をかけて曲作りを進めてきたという。

 「それが自分にとってのちょっとしたセラピー・ルームみたいな感じになって、ツアー先で自分が考えたことや経験したことを記録として形にしていった。このアルバムを作ること自体が、自分にとっての癒しの場であり、自分の心の置き所みたいな役目を果たしてくれていた」。