連載

【現代ポップ独立派】第1回 疲れた時はアーロ・パークス(Arlo Parks)を聴きたい

 最近あんまり新しい音楽を聴けてないなあ、なんて思うことありませんか? 私はけっこうあります。サブスクでいろいろと保存はしたものの、仕事が終わって帰り道に聴くのは、結局昔から聴きまくっているペイヴメントの3枚目だったりとか。それはそれでけっこう満たされるんだけど、何となく不満というか、これで良いのかなという感じも残る。そんななかで〈やっぱり新しい音楽を聴いていきたい!〉というモチベーションを皆さんと共有するために始められたのが、インディー系の洋楽を扱うこの連載。今回はアーロ・パークスとクロードを紹介する。

 アーロ・パークスは2000年生まれの20歳。BBCの〈Sound Of 2020〉にノミネートされ、ビリー・アイリッシュもお気に入りと、もはや紹介するまでもないサウス・ロンドン発の注目株筆頭。そして先月リリースされたファースト・アルバム『Collapsed In Sunbeams』が素晴らしい。

ARLO PARKS 『Collapsed In Sunbeams』 Transgressive/BIG NOTHING(2021)

 この作品は非常に耳当たりが良く、リラックスしたムードで溢れている。R&Bスタイルのビートは滑らかで、ヴォーカルは抒情的なサウンドと溶け合い、細やかな心の動きを描く。彼女は影響を受けたアルバムとしてディアンジェロやエリカ・バドゥの作品と共にレディオヘッドの『In Rainbows』を挙げているが、それも納得の、いわばフランク・オーシャン『Blonde』以降のブルーで親密なR&Bだ。

 また、シルヴィア・プラスといった詩人達からインスピレーションを受けた彼女が書く歌詞も素晴らしい。メンタルヘルスや孤独、大切な人との別れといった重めのテーマを扱うのだが、その視線はとても優しくて暖かい。YouTubeに上がっているMVのコメント欄には〈アーロを聴いていると抱擁されるような気持ちになる〉といったコメントも多いが、それも納得。ただサウンド的にも歌詞の面でもそんな深い癒しを与えてくれるアーロが人気なのは、もしかするとそれだけ皆が癒やされたい、ということの表れなのかも。

CLAUD 『Super Monster』 Saddest Factory/Dead Oceans/BIG NOTHING(2021)

 もう一人のクロードはブルックリンを拠点とするノンバイナリー(自身の性認識が男女という区分けに属さない)なシンガー・ソングライター、クロード・ミンツによるプロジェクト。今月、フィービー・ブリジャーズが立ち上げたレーベルから、アルバム『Super Monster』をリリースした。ドリーム・ポップ的な音像とモダンなプロダクション、音の配置が気持ち良いメロディー、そして自然体で気取らない〈Z世代〉の感性が詰まった、2021年型インディー・ポップの傑作だ。フィービー同様に今後さらに大きな存在となっていくはず。なおクロードは日本とも関わりが深いトラックメイカー、ライアン・ヘムズワースのプロジェクト、クォーター・ライフ・クライシスにも参加していて、こちらも素晴らしいのでぜひ。

 今回紹介した二人の共通点を挙げるとすれば、共に革新的な音楽性を追求するというよりかは、手元にある道具で自分にとって確かなものを作り上げていくタイプということ。そして大きなテーマを扱うというよりかは、身近な人をケアしていく音楽だ。

 その他にも今月はプーマ・ブルーやモグワイ、そして日本からは大和那南のアルバムが出たりと、インディー系の新譜が充実しているが、今回はこのあたりで。

 


【著者紹介】岸啓介
音楽系出版社で勤務したのちに、レーベル勤務などを経て、現在はライター/編集者としても活動中。座右の銘は〈I would prefer not to〉。

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