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――パワーコードだけではなくて、テンションコードも効果的に取り入れてますよね。

後藤「“西方コーストストーリー”はmaj7(メジャーセブンス)コードからはじまるんですけど、そういう曲は今まであまりなかったんですよ。(音楽的な技術を)ひけらかすのは好きじゃないけど、あまり難しく考えなくてもいいんじゃないかなと思って。長くやってるとセブンスコードやテンションの和音も〈普段使い〉できるようになりますからね。大学生がワイワイしてる居酒屋に行くと、〈40過ぎて来るところじゃないな。もうちょっと落ち着いた店で飲もうか〉ってなるじゃないですか(笑)。それと同じようなことかな、と。あんまり上手い例えじゃないけど(笑)」

――(笑)いい音でパワーポップを演奏することの楽しさは、15年前も今も変わらないですか?

後藤「うん、そう思いますよ。メンバーが気に入ってる曲をいい音で演奏できたら、それだけで最高じゃん!みたいな。アートを追求していくと苦しい部分も出てくるんですけど、根源にあるのはバンドをはじめたときの気持ちというか。デカい音を鳴らして、ワーッと歌う気持ちよさはずっとあるので。『サーフ ブンガク カマクラ』を作ってると〈やっぱりバンド好きだな〉〈俺はロックバンドをやりたかったんだ〉って思いますからね」

山田「もしかしたら昔より今のほうが楽しくやれてるかもしれないですね。以前は自分たちでハードルを上げていた部分があったと思うんですよ。パワーポップをやるときも、〈タイトな演奏をしなくちゃいけない〉というか。経験を重ねるなかでバチッと演奏するコツも掴んできたし、単純にこの4人で音を出すのが楽しいので」

喜多「レコーディングに関して言えば、15年前は〈一発録り〉が基本だったんです」

――しかも、あまり練習しないでレコーディングしていたとか。

喜多「それが必然だったんですよね、当時は。その前の『ワールド ワールド ワールド』(2008年リリースの4thアルバム)はセッションでアレンジを作り込んで。『サーフ ブンガク カマクラ』はその反動というか、〈あんまり練習しないで、気軽にやろうぜ〉みたいな感じだったんです。今回のレコーディングは、〈ゴッチからデモを受け取って、ギターのアレンジを考えて、メンバーに聴いてもらう〉という作業もできたので、そこもよかったのかなと。メンバーに〈いいね〉って褒められると嬉しいし」

後藤「〈それはやめて〉って言ったこともあったけどね(笑)。ガマンが効かないというか、すぐ弾き過ぎちゃうんですよ。“石上ヒルズ”もそうだよね?」

喜多「そうだね(笑)。“石上ヒルズ”は(新曲のなかで)最初にデモが送られてきた曲だったから、つい盛り過ぎちゃって。『サーフ ブンガク カマクラ』の曲はいろいろとアレンジが思いつくんですよね。やっぱり好きだなって思ったし、パワーポップは楽しいですね」

――伊地知さんがドラムのレコーディングに関してこだわった部分は?

伊地知「以前の曲はその場で出てきたもの、即興性を大事にしていたんですけど、ツアーで演奏するなかで少しずつ完成されて。アレンジやプレイに関しては、基本そのままでいいなと思ってたんですよね。突き詰めたのはサウンドかな。レコーディングはずっと使わせてもらってるランドマークスタジオ(横浜)だったんですけど、ロフトみたいな部屋があって、そこで録ってみたらすごくいい感じになって。〈これはやったことがなかったな〉という新鮮さや発見があって、自分たちも楽しかったですね」

――サウンドメイクの知識やテクニックも身についている、と。耳も良くなってるだろうし。

後藤「そろそろモスキート音が聞きづらくなりそうですけど(笑)。音に関しては、耳が良くなったとか、技術が上がったというより、対処の仕方が上手くなってるんでしょうね。今回のレコーディングも、楽しくやっていたとは言え、けっこう悩む時間もあったんですよ。〈2008年の音源を越えなくちゃいけない〉というプレッシャーもないわけではなかったし、やっぱり簡単には終わらせてくれないんだなと。マスタリングを終えて、満足できるものになったときは〈よし!〉と思いましたね」