わざとああなってます
そして、ササブチヒロシのドラムによって〈予告版〉からリズムを一新した“狂う得る芥”を挿んで登場するのは、作曲を村井が、作詞・編曲を石井が担当した“赤色矮星”。メタリックなリフに分厚いシンセが重なるメロディアスなナンバーだが、当初はあのV系バンドを想起させるものだったという。
「2000年以降のメタルをあんまり聴いてないんで、そのへんを意識して。とにかく青さんの左手が一回も動かないメタルを作ろうと思ったんです。それで、最初は歌詞もメロも僕が作ってたんですけど、秀仁君から〈これはLa’ royque de zavyだ〉って言われて。真面目な曲に対して怒りを込めた歌詞を書こうとしたら、曲調がそういえばzavyなんだなっていう。そこに秦野(猛行)さんのキーボードが入ったらさらにzavy度が加速していって」(村井)。
「歌詞も〈月に変わって〉みたいなタイトルで、それらしいことを言ってたんですよ。だからその要素をちょっと残して、逆にお仕置きされたほうの歌詞にしたんです(笑)。赤色矮星っていうのは真っ赤に光ってる惑星なわけだけども、それって温度も低くて、大したことないから赤いんですよ。要は弱い雑魚なんです。そういう人たちが月の裏側を想像してますっていうふうに視点を変えてみました」(石井)。
中盤に置かれたのは、パンキッシュな石井曲“脱兎さん”と、桜井による沈み込むようなスロウ“紫陽花の午後”。対照的な2曲が並ぶ。
「“脱兎さん”は、初期パンクの一般的な名曲と、自分にとっての名曲をくっつけたもので。みんなが知ってるピストルズだとかダムドだとかに対して、俺の中でのいちばんのパンクのワイヤーが入ってくるみたいな。で、サビのファルセットの部分を抜けた後にもう一回メロがくるじゃないですか。あれは、そこで日本の80~90年代のホコ天のビート・パンクにいけないかなと思ったからで。最後の最後はわざとああなってます(笑)」(石井)。
「“紫陽花の午後”は、どちらかというと歌詞がメインの曲で。テーマは〈DV、ダメ。ゼッタイ。〉ですかね。歌詞の主人公に去来する心は、以前作った“トイレでGO!”に繋がりつつ、また別の後ろ暗さを日常に縫い付けてる感じです」(桜井)。