1. 佐藤奈々子 “サブタレニアン二人ぼっち”
コケティッシュな魅力を放つ都会的なシンガーソングライター。77年に発表したファーストアルバム『Funny Walkin’』は、1曲を除く全ての作曲を(まだデビュー前の)佐野元春と佐藤が共作し、全曲のアレンジを大野が担当している。
選ばれたのは煌めくような高揚感に満ちたグルーヴィーチューンで、2019年にアメリカのライト・イン・ジ・アティック(Light In The Attic)からリリースされて話題を呼んだ邦楽コンピ盤『Pacific Breeze: Japanese City Pop AOR & Boogie 1976-1986』にも収録された名曲。
余談ながら、大野雄二の楽曲をあえてシティポップ的観点で捉えた場合、70年代は“サブタレニアン二人ぼっち”、80年代ならば慶田朱美“エンドレス・トワイライト -最後の真珠-”を筆頭に挙げたい。
2. You & The Explosion Band “愛のシルエット”
膨大な大野ルパンクロニクルの記念すべき最初の一枚『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック』(78年)の収録曲で、デイヴ・グルーシンにも通じるメロウなジャズ・ファンク。

アルバムの1曲目はもちろん“ルパン三世のテーマ”だが、そこをスルーして2曲目のこちらをチョイスしているのが『TOUCH』の大胆不敵なところだろう。即座に「ルパン三世」の楽曲だとわかる人はそう多くないと思うが、余計なバイアスがかからないぶんコンピ中の1曲としてスムーズに聴けるのではないだろうか。
3. しばたはつみ “I Wish You Love”
しばたはつみは大野のお気に入りシンガーで、76年から78年にかけて2人でタッグを組んだ洋楽志向の強いアルバムを3枚リリースしている。
この曲は 77年発表の『Love Letters Straight From Our Hearts』に収録されており、オリジナルはキーリー・スミスの名唱でも知られるジャズスタンダード。本来は緩やかなバラードだが大野はダンサブルなアップ・ナンバーに仕立てている。終盤で炸裂するスキャットも強力で、フリー・ソウル系のコンピに収録されていてもなんら違和感のないフロアユースな一曲。
4. 大野雄二&ギャラクシー “きらめくインナースペース”
78年から約1年間にわたってNHKで放送された「キャプテンフューチャー」の挿入曲。同作は「ルパン三世」シリーズや24時間テレビ内の特番だった「海底超特急マリン・エクスプレス」と共に、大野アニメワークスを代表する作品だろう。

80年代にヨーロッパでも放送されて人気を博したようで、2016年には「Capitaine Flam」というタイトルでフランス版Blu-rayも発売されている。またサントラ需要も高く、2014年にはイタリアから非公式LPまでリリースされているのが驚きだ。
そんな背景も後押ししたことで本作に収録されたと思われるが、やはり主題歌の男気ディスコ歌謡“夢の船乗り”ではなく、このアブストラクトなコズミックファンクを選曲しているのが興味深い。
5. アン・ヤングと大野雄二トリオ “Speak Low”
アメリカ出身のクラブシンガーと大野トリオの共演によるストレイトアヘッドなジャズアルバム『As Well Be Spring(春の如く)』(75年)からの一曲。大野の活動軸がジャズピアニストからCMやドラマ音楽の制作に移行していた時期の作品ながら、アグレッシブにスウィングした演奏が情感豊かなアンのボーカルを存分に引き立てている。

クルト・ヴァイル作の有名スタンダードを大胆にアレンジしたこの曲は、以前より海外のDJやコレクターたちからも高く評価されていたため、本作にセレクトされたのも頷ける。