INTERVIEW

角川映画シネマ・コンサートの音楽監督と出演を務める大野雄二にインタヴュー「ある意味、僕のショーケース」

角川映画シネマ・コンサートの音楽監督と出演を務める大野雄二にインタヴュー「ある意味、僕のショーケース」

ある意味、僕のショーケース

 「もう、ありがたいことです。でも、そう思う前に〈えーっ!〉みたいな感じが先だった。〈こういうものを大々的にオーケストラを使ってやっていいの!?〉と(笑)」

 角川映画初期3作品の音楽を映像付きで披露する〈角川映画シネマ・コンサート〉、その音楽監督、出演依頼が届いた際の大野雄二の反応である。42年前に劇場公開された「犬神家の一族」は、記念すべき角川映画第1作であると同時に、作曲家・大野雄二の劇映画音楽デビュー作でもあった。続く「人間の証明」「野性の証明」も大野の名前を大きく世に出す大成功を記録。香しき出発点への再訪に、喜びと驚きの感慨が混じるのも当然だろう。

 「出版×映像×音楽の三位一体。宣伝の仕方から音楽の仕掛け方まで、何から何まで新しい手法だったんだよね。映画の公開と同時にアルバムも一緒に売り出されているなんて、当時の常識では考えられないことだった。すごいインパクトだよね。『人間の証明』の頃なんて、テレビをつけると宣伝スポットがやたらと流れていて、僕自身もビックリだったから」

 その言葉通り、「犬神家の一族」では映画本編の撮影や編集が終わる前に、音楽を作曲し、アルバム制作まで行っている。3拍子で書かれた主題曲の旋律美に今も震える向きは多い。

 「ただおどろおどろしいだけの方向には行きたくなくてね。だから、メロディはわかりやすく、かつ、限りなく美しいものを書きたかったんだ。意識的には、昭和20年代の日本情緒というよりも、ヨーロッパ。脚本は読んだけど、映像は一切見ずに想像だけで作った。それが逆によかったと思う。市川崑監督はメロディがあまりないような現代音楽的な音楽が好みの方でね。メロディを入れようとすると、すぐ〈違う!〉って言う。結構、喧嘩をしたよ(笑)。もし、最初から映像を見ながらの作曲だったら、おどろおどろしさの方が先行していたかもね」

 続く「人間の証明」では西条八十の詩を英訳した歌詞に曲を付け、主題歌として発表。ジョー山中歌唱の同曲は大ヒットとなった。

 「まず主題歌を作って宣伝に利用するということでは、状況的には『野性の証明』も似ているね。ただ、音楽的には『人間の証明』はアメリカ的、ジャズ的だけど、『野性の証明』は冒険映画に音楽をつけたようなもの。全く違う3作品にもなっているんだ」

 3作品に共通していえるのは、大野雄二的ロマンチシズムが音楽の節々に見事に発露しているあたりか。それ以上に、映画音楽の作家としての振り幅の広さ、深さが、この3本には凝縮されているとしていい。

 「ある意味、僕のショーケースになっているかな。角川映画の音楽でありながら、僕の音楽にもなっているわけで、今回も角川映画コンサートであると同時に、僕自身のコンサートにもなっている。そこがありがたい」

 ゆえに、今回の公演では映画用の音楽をただ再現するような形にとどめたりはしない。

 「通常のシネマ・コンサートみたいに、全部の映像を流しながら音楽を再現しても、単なる〈伴〉(伴奏)になっちゃう。それじゃ、つまらないでしょう。無茶を言えば、映像がなくてもいいじゃないか、と。曲によっては、メロディは残すけれどフォルムは全く変えてみる、とかね。あれから40年も経っていて、昔とは違う僕もいる。演奏にしても人数が違うし、アレンジも変えざるを得ません。もちろん、〈あ、これこれ!〉みたいな感じも出したいと思っていますけど、全部をそうしてしまってはやっぱり面白くないでしょう」

 約50人から成る管弦楽と並んで、大野が普段、活動を共にしているバンド・メンバーが顔をそろえているあたりもポイントだ。

 「そう、そこがミソ。みんな、うまい奴ばかりだから、『犬神家の一族』のおどろおどろしいものもできるし、『人間の証明』のジャズもできる。そういうものを全部網羅できる人間をと考えて集めたんだけど、よく見たら僕と『ルパン三世』(のコンサート)をやっているメンバーとほぼ一緒だった(笑)。要するに、僕の好みの人が集まったんだね」

 たとえば、ドラムスの市原 康などは、当時の「犬神家の一族」、「人間の証明」、「野性の証明」3作全ての音楽録音にも参加しているオリジナル・メンバーだったりする。管弦楽の名前も大胆だ。〈SUKE-KIYO オーケストラ〉とはよくぞ付けたり、であろう。

 「いや、それは別に僕が名付けたわけじゃない(笑)。でも、やっぱりインパクトがあった方がいいし、宣伝のチラシとかに一番大きく出ている写真もこれ(犬神佐清)だからね。思いのほか有名人ですよ。『犬神家の一族』と言わなくてもスケキヨでわかっちゃう。もう、そう名付けるしかないでしょう(笑)」

 主題歌を担うヴォーカルの人選も面白い。「人間の証明」にダイアモンド☆ユカイ、「野性の証明」に松崎しげるというアーティストをそれぞれ配した。

 「僕みたいなひねくれ者は、今が旬の若い人より、〈こういうスゴイのがいる〉っていう感じの人間を連れてきちゃうんだね(笑)。そういうインパクトも出したかった。ダイアモンド☆ユカイさんには普段、テレビで話している感じで歌ってもらっていいと思っています。ちょっとトボけた感じでね。松崎さんとは昔、CMの仕事でご一緒したとき、いきなりウワーッと声を出してきてスゴイなって思った記憶がある。今はもっと大人っぽく歌うと思うけど、昔のあれでやってもらえたら面白いだろうなって。ただ、ダイアモンド☆ユカイさんに対してもあまり〈こう歌え〉とは言いたくないですね。よっぽど違っていたら〈それはちょっと〉と言いますけど(笑)」

 トークゲストには金田一耕助こと石坂浩二を招聘。本名の武藤兵吉としてよく認知していたという慶應義塾大学の同窓・石坂相手に、どんな会話が展開するのかもお楽しみ。そんな充実した公演仕様に、さぞ新編曲も順調に進んでいるかと思いきや……。

 「いや、全然進んでいない(笑)。もう大変ですよ。たぶん、3月いっぱい……いや、きっと4月4日まで書いているね。でも、大丈夫。リハーサルまでにはちゃんと間に合わせますから(笑)」

 そのギリギリ作業に弾ける、ただならぬナマ感。大野は郷愁によろめかない。あるのは目前の音楽への興味だけだ。在りし日の傑作を素材にして今、大野雄二の新たなセッションが始まろうとしている。

 


Profile
大野雄二(Yuji Ohno)
静岡県熱海市出身。作曲家として膨大な数のCM音楽制作のほか、「犬神家の一族」「人間の証明」「野性の証明」などの映画やテレビの音楽も手掛け、数多くの名曲を生み出している。リリシズムにあふれた、スケールの大きな独特のサウンドは、日本のフュージョン全盛の先駆けとなった。その代表作「ルパン三世」「大追跡」のサウンドトラックは、70年代後半の大きな話題をさらった。大野雄二トリオでの活動やYuji Ohno & Lupintic Six など、ジャズクラブからフェスまで積極的にライヴを行っている。

 


角川映画 シネマ・コンサート 第1弾
角川映画3作品のハイライト映像×大野雄二オーケストラの生演奏!
○2018/4/13(金)18:00開場/19:00開演
○2018/4/14(土)13:00開場/14:00開演
○会場:東京国際フォーラム ホールA

【上映作品】


©KADOKAWA1976

「犬神家の一族」(76年)
原作:横溝正史
監督:市川崑
脚本:長田紀生/日高真也/市川崑 音楽:大野雄二
出演:石坂浩二/島田陽子/あおい輝彦/高峰三枝子/三条美紀/草笛光子/地井武男

 


©KADOKAWA1976

「人間の証明」(77年)
原作:森村誠一
監督:佐藤純彌
脚本:松山善三
音楽監督:大野雄二
出演: 岡田茉莉子 /松田優作/鶴田浩二/三船敏郎

 


©KADOKAWA1976

「野性の証明」(78年)
原作:森村誠一
監督:佐藤純彌
脚本:高田宏治
音楽監督・作曲:大野雄二
出演:高倉健/中野良子/夏木勲/薬師丸ひろ子/三國連太郎

 

【出演】
大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ 大野雄二(音楽監督・ピアノ、キーボード)、市原 康(ドラムス)、ミッチー長岡(ベース)、松島啓之(トランペット)、鈴木央紹(サックス)、和泉聡志(ギター)、宮川純(オルガン)、佐々木久美(ヴォーカル、コーラス)、Lyn(ヴォーカル、コーラス)、佐々木詩織(ヴォーカル、コーラス)、MiMi(ハンマード・ダルシマー)他
ゲストボーカル:松崎しげる“戦士の休息”歌唱決定! ダイアモンド☆ユカイ“人間の証明のテーマ”歌唱決定!
スペシャル・トークゲスト:石坂浩二

 

【特別開催】
〈角川映画ギャラリー〉東京国際フォーラムホールA会場内ロビー
【総合INFO】kadokawaeiga-concert.com

*各映画の上映は全編上映ではございません。各映画のオリジナル映像を元に特別に編集されたハイライト映像に合わせて生演奏の音楽でお楽しみいただく、最新のライブ・エンタテインメント=シネマ・コンサート形式で上映いたします。予めご了承ください。

40周年 プレイリスト
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