ギタリストの心も捉えるバリオス作品集

 映画「マチネの終わりに」に天才ギタリスト役で出演するなど、演奏以外でも様々な話題を集めるフランス出身のギタリスト、ティボー・ガルシアが6月に来日。その機会に、バリオス作品を収録した新譜『エル・ボエミオ』について話を聞いた。

THIBAUT GARCIA 『エル・ボエミオ(バリオス:ギター作品集)』 Erato/ワーナー(2023)

 「シャペル・コルネイユという会場で録音しました。ルーアンの」

 彼が見せてくれたその会場の写真があまりに素晴らしく、しばらく見入ってしまったほど。そこで録音された音色も、ティボーの繊細な、そして多彩な魅力をよく捉えている。

 「バリオスは複雑で幅広い世界を持つ作曲家&ギタリストで、とても興味深い。いつかは録音したいと思っていました。彼の作品をあえていくつかに分類すれば、南米の音楽にツールを持つポピュラーな作品群。次いで彼が生きていた時代のちょっと前のクラシック音楽のロマン派の編曲物、もっと遡ってベートーヴェンの編曲もあります。それから彼のオリジナリティに溢れた作品群。ギタリストにとってはとても魅力的であると同時に、様々なバックグラウンドを持つ聴き手の方にとっても興味深いと思っていましたので、常に心の中にはあったのです」

 膨大なバリオスの作品から“森に夢みる”“ビダリータ(バリオス自身による詩<ボエミオ>の朗読付き)”“蜜蜂”“ワルツ”などが選ばれ、そこにバリオス編曲のショパン“24の前奏曲から第20番”とベートーヴェン“ピアノ・ソナタ第14番『月光』第1楽章”なども収録されている。以前の録音であるバリオスの“大聖堂”はボーナストラックとして収録。

 「弾きたい曲があり過ぎて、たくさん録音したので、実は今回のアルバム1枚には入れる事が出来なかったのです(笑)。他の曲は次の機会に取って置くので、楽しみに待っていてください!」

 と、やや興奮ぎみにティボーは語ってくれた。

 「今回の録音では、演奏しながら本当に魔法のようにバリオスの世界に魅き付けられました。ギタリストの視点から言うと、彼の編曲作品には変則調弦を使ったものも多いのに、その変則調弦の音は出て来ないというような不思議な編曲もあります。ギタリストとして彼のアイディアを探って行くのは本当に面白い作業です。そして放浪のギタリストとも呼ばれる彼の旅先での経験を、作品の至るところに感じさせてくれます。有名な“大聖堂”もそのひとつです」

 ティボーの招くバリオスの世界。ふたりの歩みをこのアルバムで私たちも追体験したい。

 


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2024年5月来日予定!

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