作曲家/ピアニストである中島ノブユキが、2024年2月7日(水)にビルボードライブ横浜のステージに登場する。意外にも今回が初のビルボードライブ公演とのこと。サウンドトラックを手がけた映画「人間失格」(2010年)以降、世界を舞台に活躍する中島の演奏をどこよりも間近で体感することができる、またとない機会だ。
今回のビルボードライブ公演は、これまで以上に特別なコンセプトが設けられている点にも注目したい。2006年に発表した自身初のソロアルバム『エテパルマ〜夏の印象〜』が、このたび2024年2月23日(火)に初めてアナログレコードにてリリースされることを受け、本作をフィーチャーした〈エテパルマ・アンサンブル〉が再び行われるのだ。
『エテパルマ〜夏の印象〜』は単なるピアノアルバムではない。中島のピアノを中心にした優れた室内楽作品ではあるが、クラシックからジャズ、ブラジル音楽にいたるまでが独自のブレンドによって溶け合い、今や世界で活躍する中島の原点にして一つの頂点に到達したアルバムとも言える。
幕開けを飾る“イントロダクション”の一音目が鼓膜を揺らした瞬間、聴く者すべてがその作品世界の虜になる。優雅でありながら、時折不穏なコードが顔をのぞかせるピアノのみの楽曲は、移り気な夏空のようだ。続く“ユーリディスのワルツ”では、ボサノヴァを代表するヴィニシウス・ヂ・モライスの原曲をクラシカルな装いに仕立て直し、弦楽トリオや北村聡のバンドネオンによるアンサンブルが聴き手との距離をさらに縮めている(北村は今回のビルボードライブ公演にも参加)。
中島のピアノと北村のバンドネオンが絡み合う、抒情的かつドラマティックな“フォーリング”もリリースから17年を経た今、再びライブで披露されることでこれまでとは違う印象を抱くかもしれない。フェデリコ・モンポウの初期の代表曲である“内なる印象”も、スペインでの誕生から100年以上が経過したここ令和の日本でどのようなアレンジのもと観客に届けられるのか、ライブ前にリスナー自身で想像してみるのもいいだろう。
『エテパルマ〜夏の印象〜』には先述の北村聡のほか、渡辺香津美、伊藤ゴロー、高田漣、菊地成孔、青柳拓次など記名性の高いプレイヤーが多数参加している(ジャケットデザインは蜷川実花)。現状、サブスク未配信なだけにすぐに視聴するのは難しいかもしれないが、未聴のまま今回の〈エテパルマ・アンサンブル〉に足を運び、その流れでアナログ盤に手を伸ばすのも贅沢な体験だ。
ちなみに、今回のアナログ盤は『メランコリア』(2010年)以降、中島のすべてのソロ作でサウンドエンジニアリングを担当している奥田泰次(studio MSR)がオリジナルミックスから新規マスタリングを施しているとのこと。つまりは音源でも新たな視聴体験が期待できる。
中島も〈本当に久しぶりのエテパルマ・アンサンブル公演〉とSNSで投稿しており、同公演を本当に楽しみにしているようだ。演者がそれだけ胸を躍らせるほどのビルボードライブ公演、一夜限りの名演をお見逃しなく。
LIVE INFORMATION
中島ノブユキ
エテパルマ・アンサンブル
2024年2月7日(水)ビルボードライブ横浜
1stステージ
開場/開演:17:00/18:00
2ndステージ
開場/開演:20:00/21:00
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14562&shop=4
サービスエリア/カジュアルエリア:6,500円/6,000円(1ドリンク付)
※本公演はClub BBL会員、および一般販売をWEB受付のみ実施いたします
※法人会員は電話にてご予約承ります
■メンバー
中島ノブユキ(ピアノ)
北村聡(バンドネオン)
藤本一馬(ギター)
伊勢三木子(ヴァイオリン)
菊地幹代(ヴィオラ)
徳澤青弦(チェロ)
田中伸司(コントラバス)