細野晴臣と松本隆だけで録音した“風をあつめて”
安田「『風街ろまん』からは茂さんも曲を書き始めて、それぞれのメンバーが作曲した曲を自分でプロデュースする感じになるんですよね。細野さんの曲は細野さんが主導で、という」
松本「そうだね。自己プロデュースが際立ってたね」
安田「それに対しては、疑問とかはなかったんですか?」
松本「いや、このままいくとすぐ解散するだろうなって……(笑)」
安田「危なっかしいですね(笑)」
松本「そういう点で一番有名なのは、“風をあつめて”のレコーディングだよね」
安田「そうですね。“風をあつめて”についてはちょっと訊いてみたかったですね」
松本「茂も来ないし、大滝さんも来ないし」
鈴木「(細野と)2人っきりでレコーディングしたんでしょ?」
松本「〈あの2人は?〉って細野さんに訊いたら、〈要らない〉って(笑)」
会場「(笑)」
安田「茂さんのギターは、あんなにどの曲でも入っているのに(笑)」
松本「細野さんはドラムだって上手だから、僕も要らないんだ(笑)。まぁ、僕は詞先で書いてるから、ギリギリ呼んでくれたんだと思うけど」
鈴木「『ゆでめん』の録音は2chのレコーダーでスタートして、このバンドでは無理だということで、4chを何台かピンポンしながら使った。それで、その次の『風街ろまん』が8chになったんです。3枚目の時にアメリカへ行って、ようやく16chかな。
〈この曲をどういう風に仕上げるか〉というイメージが最初からはっきりしていないと、トラック数が少ないから、すぐにフルになってダビングできなくなっちゃう。だから“風をあつめて”は、細野さんの中に最初から仕上がりのイメージがあって、僕と大滝さんを呼ばなかったんだと思うよ。イメージが固まっていて、そこにエレキギターはいらなかったんだろうね」
安田「以前、茂さんにインタビューさせていただいたときに、ユーミンの“卒業写真”とかがお店で流れたら、〈このギター、俺が弾いているんだぞ〉って言いたくならないですか?って訊いたんですよ。そしたら、〈いや、そんなことはないけど、間違っている箇所に気付く〉っておっしゃいましたよね。“風をあつめて”は、それの逆ですよね。〈俺はいないぞ〉という(笑)」
松本「茂は無数の曲でギターを弾いてるからね」
安田「松本さんも、ご自身の言葉を街中で聞かない日がないですよね」
松本「林だってそうだね。ほとんどの曲に林立夫のドラムが入ってるよね。クレジットされていないだけで」
解散理由は謎のままで
安田「それで、『風街ろまん』でやりつくしてしまったという感覚があったんですよね?」
松本「そうね。ステージ1とステージ2の間の休憩を挟んで、後半のセッションがいきなり“風をあつめて”で誰も来なくて(笑)」
鈴木「はっぴいえんどというのは、ピラミッド型の制作体制になっていないんだよね。例えばサザンオールスターズは桑田(佳祐)くんが先導するけど、はっぴいえんどは曲ごとにトップが違う。大滝さんの曲だったら大滝さんが頂点に立って色々指示を出すような、そういう集まりだったから、ちょっとバランスが狂うと上手くいかなくなったんだろうね」
松本「そうだね。僕は詞を書いていたから、それがバラバラにならないように詞で綴じるようなことをやっていたのかな」
安田「だから、ちょっと俯瞰したところからバンドを見ていたんですよね」
松本「でも、解散の理由は分からないね。こうじゃないかな?というのはあるんだけど、それは言えないようなことで……(笑)」
鈴木「謎のままにしておいた方がいいかもしれないね(笑)」