春のツアーに向けて準備を進めているRYUTist。櫻木大悟さん(D.A.N.)作、新体制で初となる新曲“君の胸に、Gunshot”を2023年2月7日(水)にリリースすることも発表したばかり。そのRYUTistの宇野友恵さんによる、本にまつわる連載がこの〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。2024年の初回は、同じくアイドルとして活躍していた長濱ねるさんが日常をありのままに綴った初のエッセイ集「たゆたう」について。友恵さんにとって長濱さんの存在と言葉は、悩み事の多い日々に差し込んだ光のようだったみたいで……。 *Mikiki編集部
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2024年1月某日。新潟の大型書店にいました。
膨大な本に、いつもはウキウキするのに、今日はどの本にも焦点が合わない。
一人でいるとき、スイッチを切られたように思考が停止する瞬間があります。一瞬で戻ってこられるときもあれば、日が暮れるまで何もせずにぼーっとしているときもあります。
年明けから衝撃を受ける出来事がありすぎて、すでに疲れ気味だったのかもしれません。もしかしたら、ただお腹が空いていただけかもしれません。
モノクロの世界でよろめきながら彷徨っていると、ふと、よく知っている名前の、大好きだったあの子のエッセイをみつけました。
〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉第30回目は長濱ねるさんの「たゆたう」をご紹介します。
私は、アイドル時代の彼女を応援していた一人でした。
顔がタイプ。最初の登場シーンの印象から、次第に彼女の知的さ、空気感やユーモアに心を奪われていきました。
遠くから応援することしかできていませんでしたが、彼女からメッセージが届くというアプリに登録して、届く日も届かない日も気にして、喜んだり心配したりしていました。
読書が好きな彼女がブログやメッセージに紡ぐ言葉選びが好きでした。
また彼女の文章を読めることが嬉しく、その一冊を頼るような気持ちでレジに持っていき、近くのカフェでコーヒーとサンドイッチを頼んで、すぐ読みはじめました。
「たゆたう」はアイドルを卒業後、「ダ・ヴィンチ」にて2020年から3年にわたって連載をしてきたエッセイが本になったものです。
〈はじめに〉を開くと、私の知っている彼女のほわほわとした可愛い声で文章が再生されました。〈自分のことをまだ紐解けていないので自分の傾向をいくつか挙げる〉と綴るところから彼女らしさが懐かしく蘇り、でも次のページを開いてみると、私の知らない側面が次々と浮かんできました。
高校生の頃、学校で“二人セゾン”のMVを解禁と同時にみたあの日。
当時の私は、アイドルが仕事というなら、それ以外のプライベートはほんとにひどいものでした。朝起きられない日が続いて、できる限りのことは試したけど、どうやっても駄目で、なかなか重症でした。自暴自棄になり、自分の存在意義を見出せず、余計に悪化して部屋に閉じこもるようになっていきました。
やっと登校できた日のお昼休み、一人でこっそりみた新曲のMVは眩しかった。画面に映る女の子たちは尊くて、涙が出てきました。彼女は私の光。明日もがんばって起きようと精一杯の目標を誓いました。
時を経て出会ったエッセイの中の彼女はありのままでした。
だらけた生活、恥ずかしい経験、家族や友達とのエピソード。想像以上に人間味に溢れていて、より好きになりました。
そして意外にも自分と重なる暗さに共感の連続でした。同い年の彼女の文章に、うんうんとうなずき、今の自分も、あの頃の辛い記憶も清められていくようでした。私が高校生の時に出会ったときから変わらないねるちゃんの優しさを言葉の端々に感じました。