ハイクオリティな演奏で没入する! 待望のサントラが9枚組の大ボリュームで登場
光田康典, ACE, 平松建治, 清田愛未, マリアム・アボンナサー, 救仁郷裕 『ゼノブレイド3 オリジナル・サウンドトラック』 SLEIGH BELLS(2023)
2010年に第1作目が世に出て以来、世界中でファンを増やし続けているRPG「ゼノブレイド」シリーズ。その最新作となる「ゼノブレイド3」のオリジナル・サウンドトラックが、なんと9枚組という大ボリュームで登場した。約1年前に届いた本編に加え、配信リリースされた追加コンテンツ「新たなる未来」の楽曲も網羅した本作は、じつに全142曲。初作から関与している光田康典を筆頭に、ACE(工藤ともり、CHiCO)、平松建治、清田愛未ら馴染みの作家陣が織り成すオーケストラ・サウンドは、壮麗にして重厚だ。ハード&テクニカルなギターが唸るバンド演奏や、神秘性で圧倒する多重コーラスといったアクセントも随所に散りばめながら、全体的にはシリアスな物語と呼応した物悲しくもリリカルな音世界を立ち上げている。
ラグジュアリーな管弦楽器がふんだんに投じられるなか、メインに据えられているのはオリエンタルな篠笛の音色。ゲーム本編における6人の主人公たちは2つの国家が争う世界で10年という短い寿命を戦いに費やしていくが、そのうちの音楽をもって死者を弔う〈おくりびと〉の奏でる楽器が篠笛だ。その〈おくりびと〉とは、〈命〉をテーマとするストーリーの哲学的な面も担う重要なキャラクター。今回の音楽制作はまず2本の笛そのものを作るところから始まったそうで、雄弁な2つの旋律が紡ぎゆくドラマは、まるで思索にふけるような没入感と染み入るような余韻を与えてくれる。
〈1〉と〈2〉のスコアをモチーフに忍ばせた楽曲も用意されたりと、ゲームのプレイヤーならではの楽しみ方もありつつ、「ゼノブレイド」シリーズに触れたことのないリスナーにもシネマティックなインストゥルメンタル作品としておすすめしたい本作。演奏自体のクオリティも素晴らしいので、願わくは、どこかの交響楽団とコラボしてのオーケストラ・コンサートを企画してほしい。
INFORMATION
ゼノブレイド3 オリジナル・サウンドトラック 特設サイト
https://www.procyon-studio.co.jp/special/xbostportal/xb3ost.html
ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション オリジナル・サウンドトラック 特設サイト
https://www.procyon-studio.co.jp/special/xbostportal/xbdeost.html