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(左から)藤田正(インタビュアー)、レイナルド・マーカス・グリーン監督
監督が持っているのは藤田の著書「ボブ・マーリー よみがえるレゲエ・レジェンド」と「歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター

ボブが音楽を紡いだように観客も音楽を発見してほしい

――音楽の面ではジギー、リタとどのように話し合いましたか?

「2人とはまったく話していません。伝統的な音楽伝記映画をつくろうとは考えず、私のアプローチは、〈ある男についての映画〉をつくることでした。そして映画には音楽があった。映画をリードしていたのは、この男、つまりトレンチタウンのストリート出身の貧しい少年であり、音楽が彼の人生をいかに導いたか、という物語です。

幸運にも私たちは音楽を手に入れ、その恩恵に浴しました。ただ、音楽を映画の中でどう使うかという点では、ボブが音楽を紡いでいったのと同じように、私たちも音楽を発見していく映画にしたかったんです。〈ボブはペンと紙で曲を書いたのかな?〉とか、〈ギターで曲をつくったのかな?〉とか、そんなところに興味がありました。ほかの音楽映画でも、私が好きなのはそうした部分だからです。

愛であれ、慈悲であれ、彼らがいかに創作し、ロンドンの暮らした部屋でどのようにアルバム『Exodus』をつくったのか? そのシーンがこそが私にとって最高に楽しい瞬間です。あの場面では、ネヴィル・ギャリック(ボブの作品のアルバムジャケットを描いたグラフィックアーティスト)が瓶を叩いていますよね。そんなことがとても愉快で、興奮します。

私は常に、音楽は物語の一部であることを望み、物語をけん引するものではないと思っていました。それが今回の、私たちの音楽の扱い方です」

――映画「ONE LOVE」の音楽の特徴の1つとして、ボブ・マーリーのオリジナルレコーディングと、主役のキングズリーの歌声の併存が指摘できます。当然ふたりの声は違うのだけれど、映画全体の中で見事に溶け合っています。これは監督が意図したことですか?

「はい、もちろん。キングズリーをキャスティングした時、彼が歌えるのかまったく知りませんでした。私は、(『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じた)ラミ・マレックや(『エルヴィス』でエルヴィス・プレスリーを演じた)オースティン・バトラーに、ミュージシャンをどう演じ、どのように音楽にアプローチしたのか話を聞きました。彼らはただ、演技をしたと言っていました。ラミが歌うのを聴いたけど、彼は優れた歌手ではありません(笑)。でも、ラミは素晴らしい俳優です。彼は映画の全シーンで歌ったと言いました。OK! キングズリーは優れた俳優だから、歌声はまったく問題じゃない。声はいつでも差し替えられます。そこで、キングズリーが全編で歌えるようにしながら、必要に応じて歌声を差し替えるアプローチで挑みました。

ただ、寝室でボブがリタに“Turn Your Lights Down Low”を歌うシーンは、彼が音楽を見つけているところなので、キングズリーの声をそのままにしています。あの瞬間、ボブはアルバムの録音をしているわけではありません。寝室とスタジオの録音ブースの音は違うでしょう? だからキングズリーのオリジナルの歌声をかなり残しました。ギターの演奏は差し替えたけど、彼はどこが差し替えられたのか知りませんよ。これこそが、映画の魔法です。というのも、雑な音が鳴っているほうが、あのシーンでは最適で、オーガニックでリアルに聴こえます。あそこでボブ本人の声を差し込んでしまったら、観客を映画から引き離してしまう。

映画の冒頭で“I Shot The Sheriff”を歌うシーンではマイクを通して歌っていますから、ボブの録音を使えばいい。マイクがあるのとないのでは、事情が少し異なります」