今世紀最高のアーティストの一人にして、Aの衝撃と情熱は記録にも記憶にも残る。〈サマソニ〉のヘッドライナーとして12年ぶりの来日を控えるなか、タイムリーなベスト・アルバムを入口にしてそのタイムレスな魅力に触れてみよう!
PEOPLE TREE
耳で聴いたピープル・トゥリー

アリシアのインスピレーションとなった先人は数多いが、アティテュードの面も含めて色濃い影響を与えたのは彼女だろう。アリシアは編集盤『Forever Young, Gifted & Black: Songs Of Freedom And Spirit』にライナーノーツを寄稿したこともあった。
登場時にはアリシアの強い影響を指摘されていた彼女だが、実際にステージ経験もある両者は互いの大ファンだそう。交流を受けて『Girl On Fire』への参加も予定されるもこれは実現せず。なお、映画〈007〉シリーズの主題歌を続けて担当した縁もあり!
ナズからロッキーに至るまで、常に時代の王者たちと絡んできたアリシア。なかでも全米No. 1ヒットの地元讃歌“Empire State Of Mind”でコラボしたジェイ・Zには昔から思い入れが深いようで、2018年のグラミー前夜祭では彼へのトリビュート演奏も披露した。
現行R&Bシーンへの影響も絶大な〈ソウルの息子たち〉。アリシアは“Diary”の演奏に彼らを招き、別曲でもドウェイン・ウィギンスと共同制作していた。その際には脱退していて不在だったラファエル・サディークも『KEYS』にてガッチリ手を組んでいる。
初期はカヴァー経由で影響源を示すことも多かったアリシアだが、特にデビュー作でプリンスの隠れ名曲“How Come U Don’t Call Me Anymore”を取り上げていたのは印象深い。後の“Like You’ll Never See Me Again”のアレンジも“Purple Rain”だったり。
NY出身でピアノを弾くシンガー・ソングライターとしてアリシアと重なるアイコン。彼女の〈MusiCares Person Of The Year〉受賞時のトリビュート公演に出演したアリシアは〈完璧な曲〉と評して“(You Make Me Feel Like) A Natural Woman”を捧げている。

シャムと共演したり、フィオナによる“You Don’t Know My Name”の名カヴァーがあったり、レゲエ方面からも愛されていたアリシアは、“No One”を出す前から偉人の影響を公言していた。『Unplugged』にはダミアン・マーリーを招いたことも。
スノー・アレグラやジャネル・モネイら影響下にある後進の女性シンガーは数知れず、その筆頭は〈アリシアの再来〉を謳って登場し、本人からも賛辞を送られたH.E.R.だろう。アリシアと同じMBKを後ろ盾に、いきなりグラミーを席巻した大物ぶりも通じるか。
イヴとアリシアが共演した時代からニアミスしていたカップルは、アリシアの作品やホイットニーらへの楽曲提供など仕事面でもたびたび共同作業を残している。スウィズ側のこのソロ作では“Pistol On My Side (P.O.M.S.)”でアリシアがピアノを弾いていた。