10代限定のロック・フェス〈閃光ライオット〉で前代未聞のグランプリ受賞ラッパーとなり、衝撃を与えたPAGE。そんな彼の1年3か月ぶりとなる新作『ノンフィクション・ガール』には、前作からのインターヴァルにおける音楽的な体験と成長が鮮明に反映されている。
「前のシングルが去年の5月で、それから〈何か新しいことやりますか〉ってなったとき、僕は普段からアニメやゲーム、秋葉原とアイドル、あとネット文化が好きなので、そういったカルチャーをクロスオーヴァーしたものにするのはどうかっていう話になったんです。その流れからMOGRAやネット・レーベル界隈のトラックメイカーたちと制作しようってなった感じですね」。
そんなテーマの元、本作にはでんぱ組.incやアップアップガールズ(仮)仕事などに携わるPandaBoYをはじめ、ヒゲドライバー(アニメ「月刊少女野崎くん」ほか)、fu_mou(私立恵比寿中学、アニメ「蒼き鋼のアルペジオ」ほか)、MoonbugのNovoiski(平野綾ほか)、The LASTTRAKといった上述のシーンをはみ出した場でも活躍するクリエイターがエッジーな電子ポップ/リミックスを提供。一方でnishi-ken、ケイタイモ&カトウタロウ&マシータ、Koji Nakamuraら歴戦のJ-Pop作家/アーティストたちも、〈ポップ・クラシック〉と呼ぶべき魅力的な楽曲を寄せている。
「もともと、アンダーグラウンドなヒップホップ、LOW HIGH WHO?や術ノ穴のアーティストが結構好きで、彼らはニコ動とかでも上位に入ってる人たちだったんです。その流れでkz(livetune)さんやヒゲドライバーさんたちを知って。彼らの作る曲は個性が爆発しながら、日本のポップスの良い部分を受け継いでいて、ダンス・ミュージックとのバランスが上手く取れてると思うんですよね」。
彼は続けてそう語るが、憧れだけで新しい地平が切り拓かれるわけはなく、そこへ近付くにはラッパーとしての苦労と葛藤があったようだ。
「ヒップホップはBPM90から100くらいがメインなんですけど、今回はBPMがダントツで速い上にラップを乗せる、しかもメロディーありきだったりしたので、だいぶ苦労しました。歌詞は、去年の10月頃から書いては書き直しての繰り返しでしたね。今回はヒップホップがベースの作品ではないけど、ヒップホップのメロ、ヒップホップの歌ラップはやりたかった。中原麻衣さんにコーラスをお願いした“魔法みたい”って曲は、そういう部分を意識しました」。
デビュー当時は家族に関して言及するなど、普遍的なテーマを歌ってきたが、今作ではアニメやアイドルといった自身の趣味や性質などをさらけ出せるまでに俯瞰できたことで、リリックに漂うナードな匂いが良いスパイスに。さらには速いBPMが疾走感を与え、甘酸っぱくて切ない、〈キミ〉と〈ボク〉との距離感が彼独特の青春模様に昇華されている。
「以前より良い意味でこだわらなくなってきて、“あ・い・ど・る”のように、今回はトラックを聴いてパッと出てきた言葉も使いました。いろいろなことを俯瞰して見れるようになったんですけど、例えばアイドルの握手会で〈結婚しようと言ったら(好意的に)泣いてくれたでしょ?〉ってファンがメンバーに主張したっていうニュースとか、アニメのキャラをあくまで一人の人間として見るとか、好きなものを信じたい気持ち、ポジティヴさにすごく感動するんです。そういう気持ちは持っていたいと思いますね」。
そんな彼らしいミックスCD『もえきゅん! かわいいは正義 MIX』も含め、自身の周囲の壁を取り去って外に踏み出したPAGEの風通しの良い2作品は、彼のキャリアにとって大きな転機になりそうだ。
「DJの現場も増えて、公式でミックス CDを出せたのも嬉しい。その時々で作りたい曲を作るっていうスタンスなので、今後も自然と変わっていく部分はあると思うんですけど、それでも毎日曲は作ってるので、変わってくのを楽しみつつ、良い曲ができたらと思いますね」。
▼『ノンフィクション・ガール』に参加したクリエイターの作品の一部
左から、Moonbugの2013年作『REMIX ASSAULT』(ソニー)、Koji Nakamuraの2014年作『Masterpeace』(キューン)、WUJA BIN BINの2014年作『INAKA JAZZ』(BETRAYAL)
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▼PAGEのシングル
左から、2012年の“You topia”、2013年の“エクスペクト”“MY NAME IS xxxx”(すべてキューン)
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