俄に勢いを見せる気鋭のレーベル、illxxxとは?
ダークでウォブリーなアレンジに、美麗でオリエンタルな旋律、そこから生じる独特のスケール感――ヒップホップにしろベース・ミュージックにしろ、新しい何かをいろいろチェックしている人なら、すでにどこかでillxxx(イルキス)というレーベルの名前を目に留めているのではないだろうか。そのロゴを刻まれた作品は今年に入ってから急増しているが、それらに共通するクロスオーヴァーな色合いには、レーベル代表を務めるKENSHUのユニークな経歴も関係しているのかもしれない。
KENSHUはオーストリアのウィーン出身で、幼少の頃からピアノやヴァイオリンなどの演奏に親しんできたという81年生まれのDJ/プロデューサー。クラシック音楽を入口とする一方でヒップホップ・カルチャーに受けた影響の大きさもあり、DJ活動は何と12歳の時にスタートしていたという。日本に帰国してからはさまざまな音楽を吸収しつつクラブ・プレイやプロデュース活動を展開。その名を大きく広めたのは、クラシック音楽をヒップホップ・ビートで再構築したプロジェクト=dulcetでの活躍だろう。後に「テラスハウス」で使われて話題となったドビュッシー使いの“Light To You”もこの頃の曲で、〈ジャジー・ヒップホップ〉の名の下にリスニング向けの作品がブームとなっていた当時にあって、この試みは新鮮に受け止められたに違いない。が、それと並行して初のアルバム『THE UNITED COLOR』を作り上げてからはエレクトロ~ダンス・ミュージックに活動の主軸を移し、〈B-BOY HOUSE〉を提唱してダブステップ~トラップなどのベース・ミュージックも取り込んだアグレッシヴな作風を確立していった。
2010年代からは〈mastermind JAPAN〉とコラボするなどファッション仕事も増やし、プロデューサーとしてはPAGEやDef Techらを手掛けつつ、〈ULTRA JAPAN 2014〉に出演する一方でオーケストラと共演……と、なかなか一口では説明しづらい振り幅の広さを披露。そんなKENSHUが昨年設立したレーベルこそillxxxというわけだ。そのリリースラッシュと時を同じくして2WINやMINMIとの仕事の成果も世に出たばかり。彼とillxxxサウンドのカッコ良さがダイナミックに拡がっていくのはきっとこれからだ。