ドーナツショップで週6バイトをしている主人公はツクユサナツコ名義で漫画を描いている。2021年4月から2022年12月まで「小説新潮」で連載。貴重なコロナ禍を背景とした時代が描かれている。ミリさんの魅力は日々のささやかな感情を丁寧かつ鋭い筆致で作品へ昇華しているところ。その〈作家の眼〉に我々は夢中にさせられている。その日の出来事をその夜に漫画化するという劇中劇のスタイルで連載漫画が進行していく。しかし、読み進めるととんでもないことが起きる。これまでの益田ミリ作品で感じたことがなかったことだし、こんな感情にさせられるなんて、な展開が。手塚治虫文化賞短編賞に輝いたのも納得の大名作。