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シンガーソングライターならではのトラックメイク

――EPの話の前に、“amaranthus”についてもお聞きしていいですか。それまでもライブ活動は活発にされていましたし、SoundCloudで音源を公開もしていました。ただ、幅広いリスナーに届けるという意味では、実質的なデビュー曲だったと思います。実際、北村さんの音楽性をお披露目するには素晴らしい楽曲でしたが、リリースのために書き下ろしたんでしょうか。

「“amaranthus”は、リリースの話が進んでから作り始めた曲です。そのリリースのきっかけになったのが、YouTubeにあげていた、コロナ禍にインストとしてつくった“Teal”という楽曲で。

その頃は自分で歌を歌うよりも、音楽を表現するみたいなマインドだったんです。なので、もう一度自分の弾き語りの部分に立ち返って、歌を歌ううえでどうトラックをつくればいいのかを考えながら“amaranthus”をつくりました」

――実際、“amaranthus”は、ボーカリストとして、ソングライターとして優れていると同時に、トラックメイカーとしての力量も提示できた曲だったと思います。さらに今回のEPでは、よりダンスミュージックに寄っている。弾き語りの時代からも、“amaranthus”の頃からも結構遠くに来た印象があるのですが、ダンスミュージックをつくるにあたって研究したことはありますか。

「まず、2021年にエマ・ジーン・サックレイを知って。彼女の音源は生音でハウスビートをやるようなスタイルで、エレクトロっぽいわけではないですが、その影響でつくったのが“ignorant bird”という曲です。ビートはパソコンで作ったんですけど、エマさんの作品をリファレンスにして、上モノのローズとか、生音に近いニュアンスを意識していました。

そこから、どうすれば4つ打ちをもう少しかっこよく表現できるかと思って、フレッド・アゲインとかスクリレックス、フォー・テット、あとフローティング・ポインツを意識して聴くようになりました」

――ただ、ビートはダンスミュージックなんですけど、和声感が豊かで、ポリリズム的に展開していったりとリズムのアレンジもすごく凝っていますよね。それが北村さんのカラーになっていると思います。

「元々、ピアノで曲を作っていたので、ピアノと歌だけの曲作りが基本になっているんです。ピアノに触れていると楽曲の構成に凝りたくなるし、DTMに向かってるときも、少し展開を工夫したくなったりするんです。もっと楽曲を豊かにさせたい、どうやったら面白く聴いてもらえるだろうという視点は、自分がトラックメイカーではなくシンガーソングライターで、ライブもやって弾き語りをしてたからかもしれません」

――展開だけではなく、打ち込みもサウンドメイクもすごく巧みです。DAWを使いこなしていくなかで、参考にしたものはありますか。

「今回のEPは、いままでずっと使っていたLogicではなく、Ableton Liveでつくりました。使い始めたのは去年の10月とか11月あたりからです。Ableton Liveを使っている人が周りにあまりいなくて、使い方については本当にYouTubeで勉強しました。頭の中にある〈ああいう音を出したい〉というのにあわせて、それをずっと検索したりして。今回のEPにはリファレンスも結構あって、そのトラックメイカーの方の音源を聴きながら、〈これはどうやって作っているんだろう〉と常に考えていました」

――具体的にはどんなトラックメイカーの方ですか?

「先ほど名前を挙げた方以外にも、日本のトラックメイカーでもすごく影響を受けた方がいて。Tomgggさん、あとFellsiusさん。おふたりの音源を制作中に聴いていました。Fellsiusさんの音源は、ひとつの楽曲のなかで展開がめまぐるしくて、音の使い方もあまり他の人がやっていないことをしていると思っていて、すごく聴いていました」