©Steve Tanner

今までになかった映画音楽の作り方を目指して

 レディオヘッドの音楽は米国の多くのテレビ・ドラマのBGMとして現在使われている。トム・ヨークの表現力豊かなファルセット・ヴォーカルは、ネットフリックスの「三体」の殺人シーンや「ウエストワールド」などのドラマで聴く者をしばしば唖然とさせ、感動させる。

 レディオヘッドやザ・スマイルのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドの作曲法は対極にありながらお互いに補い合っていると言える。グリーンウッドは作曲家を目指しクラシック・現代音楽に影響を受けた。彼は楽譜を書き、レディオヘッドの曲の多くの編曲を手がけている。グリーンウッドはジェーン・カンピオン監督の映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(2021)の音楽を作るために何日も自分一人でチェロを弾きながら多重録音でオーケストラが演奏しているように仕上げた。ペンデレツキの影響を受けた曲であっても、そのサウンドは他にない独自なものと認められ、アカデミー賞にノミネートされた。

 一方でトム・ヨークは楽譜を読めない。この映画のために、彼は多くのパートを自分で歌いソフトウェアを使って望む楽器に変換した。こうしてデモ曲を録音し、監督に送った。監督がその曲を認めると、それを生楽器で録音をした。管弦楽器や室内楽が中心の音楽になっているが、クラリネットやチェロで奏でられるメロディは、彼の歌う旋律のように聴こえて来る。彼はオーケストラ奏者を指揮して、彼が歌うようにメロディをディレクションしている映像が存在する。2つの歌の曲があるが、それぞれのヴォーカルの表現は異なっている。1曲は子守唄のように歌われ、もう1曲は古典的なジャズ・ヴォーカルの影響を感じた。

THOM YORKE 『Confidenza』 XL/BEAT(2024)

 監督のダニエレ・ルケッティは、「トムは、この映画には〈間違っている〉と言えるような音楽が必要だとすぐに理解してくれた。私たちは、緊張感を生み出すと同時に、登場人物の恐怖が鑑賞する人にとって滑稽に思えるようなものを探していた。トムの音楽でその内容を語らせるようにした。」この二人の異なるアプローチこそが現代の映画音楽に新鮮な生命を吹き込んでいる。

 


LIVE INFORMATION
トム・ヨーク来日公演

2024年11月12日(火)・13日(水)大阪・グランキューブ大阪 メインホール
2024年11月18日(月)福岡・福岡サンパレス
2024年11月19日(火)広島・広島文化学園HBGホール
2024年11月21日(木)名古屋・名古屋国際会議場センチュリーホール
2024年11月23日(土)・24日(日)東京・東京ガーデンシアター
2024年11月26日(火)京都・ロームシアター京都 メインホール