©Shinsuke Yamamoto

billboard classics SPECIAL ISSUE 02
ジャンルを超えた新しい音楽体験に挑戦するコンサートシリーズ

山下康介

 billboard classicsを象徴するアーティスト・玉置浩二を始め、JUJU、今井美樹、ゴスペラーズ、中村雅俊、CHEMISTRY、LE VELVETS、宮野真守、甲斐翔真等多くの公演でアレンジを手がける編曲家・山下康介氏にアレンジへのこだわり、重要性を聞いた。(聞き手:billboard classicsプロデューサー石田明弘氏)

 想像を超える感動を作り続けるステージ・billboard classics――オーケストラとポップスのクロスオーバーから生まれる〈熱響〉は、歌と演奏はもちろん、オリジナル曲に新たな光を纏わせるような〈アレンジ〉が果たす役割も大きい。オリジナル楽曲の元々のストロングポイントに加え、感動を増幅させる魔法をかける――それが山下氏のアレンジだ。

山下「原曲を中途半端になぞるよりは全く新しいアプローチで提示して、アーティストにもお客さんにも新しい発見、感動を提供したいという思いはいつもあります。許されるならアップテンポの曲をバラードに変えるとか、思い切ったアレンジにもチャレンジします」。

 公演後は「自分の曲とは思えない……!」と、山下氏のアレンジを絶賛するアーティストも多い。

石田「山下さんはいい意味で期待を裏切って、期待以上のものを作ってくれます。攻めたアレンジも意外と多く、例えば玉置浩二さんの“JUNK LAND”は山下さんの監修のもと、萩森英明さんがアレンジしたのですが、斬新なアプローチでファンの方にも好評です」。

山下「僕が作った玉置さんの初期のアレンジでいうと、例えばメドレーで出てくる“ワインレッドの心”は原曲からはかなり変わっていて、今でも〈よくあんなアレンジしたな〉と自分でも思うくらい冒険しました。玉置さんも初めは戸惑っているように感じましたが、そこはさすがの感性で、今はオーケストラならではの流れの中で自由に歌っていただけていると思います」。

「オーケストラが演奏しながら歌とちゃんと呼応できる、対話できるように書いています。そういうアレンジはやっぱり歌ってる人も気持ちいいと思いますし、オーケストラも気持ちよく演奏できる。そこが目指したいところです」。

 石田氏によると、billboard classicsのステージに立ちたいというアーティストが年々増えてきているという。

山下「どなたが来ていただいても、新しい発見につながると思いますのぜひチャレンジしていただきたいです。同時にお客さんは普段はなかなかオーケストラの生音に触れる機会もないと思うので、その贅沢な空間をよりリアルに感じていただけるように追求していかなければいけません」。

 「これから山下さんと共にbillboard classicsの新たな可能性を追求したい」と石田氏は語ってくれた。

石田「広げていくという意味では、オーケストラとポップスの融合の新たな可能性を探っていきたい。billboard classicsのイメージを守りつつも攻めていきたい気持ちはあります」。

山下「本来オーケストラはホールの音とひとつとなってその美しさや広がりを感じるもので、そういう生音を活かしたコンサートがひとつの理想ですが、リズムの存在やPAのバランスを追求していく中で、また新しい感動を作り上げることができると思います。フルオーケストラでなくても小編成でクラシックを追求したり、可能性はたくさんあるはず」。

 10月にはJUJUが11年ぶり2回目のbillboard classicsのステージに臨むが、初回のアレンジを手がけた山下氏が今回も編曲監修として名曲の数々を手がける。

山下「演奏者の立場になって音を組み立て、歌との呼応にもこだわり続けて、11年前より絶対に今の方がいいものを書けるという自負があるので、また新たな気持ちで臨みたい」。

 


LIVE INFORMATION
編曲監修:山下康介
JUJU/billboard classics JUJU 20th ANNIVERSARY PREMIUM CLASSIC CONCERT 2024

2024年10年1日(火)神戸国際会館 こくさいホール
開場/開演:17:30/18:30

2024年10年2日(水)神戸国際会館 こくさいホール
開場/開演:17:30/18:30

2024年10年9日(水)すみだトリフォニーホール 大ホール
開場/開演:17:30/18:30

2024年10年10日(木)すみだトリフォニーホール 大ホール
開場/開演:17:30/18:30

甲斐翔真/billboard classics KAI SHOUMA Orchestra Concert 2024
2024年10/11(金)すみだトリフォニーホール 大ホール
開場/開演:18:00/19:00

2024年10/14(月・祝)会場:京都コンサートホール 大ホール
開場/開演:17:00/18:00

※未就学児入場不可

https://billboard-cc.com/

 


PROFILE: 山下康介(やました・こうすけ)
1974年、静岡県生まれ。東京音楽大学作曲専攻卒業。映画「海辺の映画館~キネマの玉手箱」「花筐/HANAGATAMI」「その日のまえに」などの大林宣彦監督作品に多く携わるほか、NHK連続テレビ小説「瞳」やドラマ「花より男子」、アニメ「ちはやふる」、特撮作品「暴太郎戦隊ドンブラザーズ 」、「仮面ライダーセイバー」、歴史シミュレーションゲーム「信長の野望シリーズ」などの音楽がある。また、「題名のない音楽会」(テレビ朝日系)などにおいて多くの編曲を手掛けているほか、宮本亜門氏演出のミュージカル「太平洋序曲」「スウィーニー・トッド」などで公演音楽監督を務めている。現在、洗足学園音楽大学教授、東京音楽大学特任教授。一般社団法人日本作編曲家協会(JCAA)理事。

 

服部隆之

 日本を代表する音楽家の一人・服部隆之氏。今年5月に河口湖ステラシアターで開催された東京スカパラダイスオーケストラ デビュー35周年記念特別公演では指揮・音楽監修・編曲を手がけ、アーティストもファンも涙を流し感動の一夜になった。これまでのbillboard classicsコンサートを振り返り、その魅力を聞かせてもらった。

 服部氏とスカパラとの出会いは小沢健二のアルバム『LIFE』(1994年)の制作現場で、以後様々なレコーディング現場やライヴで時間を共にし、音楽活動をスタートさせた時期が重なることもあり「同志だと思っている」と服部氏は語る。

服部「オーケストラと合わせることでスカパラの勢いが削がれるのではなく、“穫れたて”のスカパラを出さなければいけないと思いました。9人のインストバンドとオケの合体、こんな難しい企画、普通考えませんよね(笑)。そこがbillboard classicsらしい。クラシックをフィーチャーしたい、でもスカパラの音の上にオーケストラが乗るだけだとつまらない、オケのアイデンティティをちゃんと出して、より〈混ざり合いたい〉と」。

スカパラ35周年記念公演(2024/5 河口湖)指揮・服部隆之
©仁礼博

服部「オケの皆さんにもスカパラになって欲しい、スカパライズムを継承したコンサートにしたいと伝えました。結果ただの〈伴奏〉ではない、全員が〈寄っていく〉というか、本気じゃないと遊べないことをやってもらって、オケの意地を感じました。あの日オケのメンバーが振り回していたスカパラのタオルは、メンバー自身が購入したものです(笑)」。

 超一流のオーケストラを弾けさせる服部氏だからこその采配だ。

服部「一発勝負なのでイメトレを重ね、リハでもブラッシュアップを重ねていきました。本番前日の食事の席で出たアイディアが採用されたり、音楽を心から楽しんでいる、懐が深いスカパラと東京フィルだからこそ成立したコンサートでした」。

 服部氏は2019年から4回にわたり〈オフコース・クラシックス・コンサート〉のアレンジ・指揮を手がけ、一昨年は日本武道館で行なった。

服部「あのコンサートは一流シンガーの歌と、オフコースのメロディをしっかり聴いてもらうアレンジでした。オフコースの音楽の特長のひとつが美しいコーラスだと思います。でもあのコンサートでは、その曲を歌うシンガーのカラーを最大限に感じてもらうアレンジにこだわりました。次に開催する時はコーラスの部分にもこだわったアレンジを作ってみたいです」。

 鈴木雅之とはカヴァーアルバム『DISCOVER JAPAN』シリーズ3作のアレンジを服部氏が手がけ、それが〈鈴木雅之 Premium Symphonic Concert 2022 featuring 服部隆之 ~DISCOVER JAPAN DX~〉として全国で5公演開催された。

服部「マーチン(鈴木雅之)さんの歌には、確固とした世界観が存在しているので、どんなアレンジを作っても見事に歌い切ってくださいます。歌がアレンジを引き立ててくれ、アレンジャー冥利に尽きます」。

 服部氏はbillboard classicsで様々なアーティストやオーケストラ、そしてお客さんと向き合い、感じることがあるという。

服部「クラシックと聞くとアーティストもお客さんもちょっと敷居が高いイメージがあると思う。でも回数を重ねてきてそれをフランクなものにしたのがbillboard classicsの一番の功績だと思います。手拍子をしても立ってもいい、そういう〈場所〉を作ったことが大きい」。

 お客さんを置いてきぼりにしない。ちゃんと巻き込みながら、でもキチンとしたアカデミックなものを聴かせてくれる。

服部「billboard classicsのコンセプトとステータスは伝わっていると思うので、色々なことができるはず。例えば演歌アーティストの出演や、個人的に興味があるビッグバンドとストリングスを組み合わせた新しい編成を考えたり、色々なことをやってもそのブランドは揺るがないと思います。厳密にいうとクラシックじゃないという人もいるかもしれない。でもアレンジにクラシックをブレンドさせたり、クラシックの新たな扉を開いていることは確かなのでどんどん新しいことに挑戦して欲しい」。

 


PROFILE: 服部隆之(はっとり・たかゆき)
1965年生まれ。83年にフランスに留学、88年にパリ国立高等音楽院修了。帰国後は作曲家として映画や舞台、TVなどの音楽を手掛ける。映画『蔵』『誘拐』『ラヂオの時間』で、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。NHK大河ドラマ「新選組!」「真田丸」、NHK連続テレビ小説「すずらん」「ブギウギ」、テレビドラマ「王様のレストラン」「HERO」「華麗なる一族」「半沢直樹」等、映画「GODZILLA 怪獣惑星」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」「ドラえもんシリーズ」のほか、ミュージカル「オケピ!」、NHK教育テレビ「フックブックロー」等の音楽を担当。