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なかのいくみ(ヴォーカル)
2017年に活動休止~2022年に再始動した加速するラブズでも活動中

人間の中にいるケモノ

 そんなバンドだけに、メジャー・デビューにあたっても「レーベルの方に〈自分たちはこういうスケジュールじゃないと動けないですが、どうですか?〉と提示させていただきました」という。今回のアルバム『モンスター』の根底にある〈まだ何者かであり続けたい〉という切実な願いは、吉野をはじめとするメンバー自身のリアルな思いと繋がっている。

 「〈何者かになりたいけど、なれない〉ということを自覚しはじめて、心に危機が訪れると、どうしても余裕がなくなってしまう。そうすると人に対して攻撃的になったり、〈自分のことをもっと見て〉と言わんばかりにSNSで騒がしくしてまったり。それは人間の中にいるケモノが出てきてる状態だと思うんですよ。心の中のケモノを鎮めて、人間らしくあり続けるにはどうしたらいいか?ということをテーマに曲を書いてみようと思ったのが、このアルバムの始まりでした。それは急に思い浮かんだわけではなく、(夜と)SAMPOがずっと掲げてきたことだと思ってます」。

清水昴太朗(キーボード)
現在の業種は園芸。家の温室で300鉢ほどの植物を育てている

 オープニング曲の“モンスター”は、〈たりない何かに 脅かされてる ないものねだる こころのモンスター〉という一節が印象的なアッパー・チューン。そこから〈「たりない何か」はどこにもなかったね〉と歌われるアコースティック・テイストの楽曲“ヒューマン”に至るまでのストーリーが、このアルバムの背骨になっているという。

 「アルバム全体を通して、心の中のケモノがいろんな経験を経て、人間らしさを取り戻すまでを描いてみたくて。“モンスター”は問題提起というか、自分の中のケモノ、つまりモンスターを認識しはじめるという歌。この曲にはサビがないんですが、ベースの加藤に〈サビを作って、そのメロディーを別の曲にしてみたら?〉と言われて作ったのが“ヒューマン”なんです。これも加藤のアイデアなんですけど、Mr. Childrenが『IT’S A WONDERFUL WORLD』(2002年)で絶望と希望を対比して表現していたこともヒントになってますね」。

 先行配信された“idea”と“変身”がアルバムでは8~9曲目に置かれた繋がりも大きなポイント。共通しているのは自分自身を受容すること、許すことの大切さだ。

 「心の中のケモノを無理矢理に抑え込もうとしたら、自分自身を否定することになってしまう。そうではなくて、〈それも自分だ〉と認めることが大事だと思ってるんです。“変身”には〈かなしさなんて くやしさなんて みとめることで 役目を終える〉という歌詞があるんですが、何のために悲しさや悔しさが存在するのかを考えると、自分を認めていくプロセスのためなんじゃないかなと。その前に自分を許すことも必要だなと思って書いたのが“idea”ですね。“idea”はフェードアウトしながら終わって、“変身”はフェードインで始まるんですが、そこで音楽的な繋がりも表現しています」。