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加藤秋人(ベース)
現職はエンジニア。ビッグバンドで演奏していた経験がある

みんなが幸せであること

 アルバム『モンスター』は、これまで培ってきた(夜と)SAMPOの音楽的なスタイルが如実に表れた作品でもある。作曲クレジットは個々のインプットも踏まえてバンド名義になっているが、曲作りのベースは主に吉野エクスプロージョンと加藤秋人のそれぞれが担っている。王道のギター・ロックに独創的なヒネリを加えた吉野の楽曲、それに対してジャズやファンクの要素を反映した加藤による楽曲のコントラストも、このバンドの大きな特徴だ。

 「(ソングライターが2人いることで)曲の幅が広がりますからね。意識して棲み分けてはいないんですけど、たぶんもともとのビートの感覚が違うみたいです。以前ビッグバンドで演奏していた加藤は16ビートで、僕は8ビートで。僕はキリンジやくるりが好きで、彼らみたいにいろんな音楽の要素を取り入れたいという思いもあって。そこは今後の課題でもあるかなと思っています」。

 ポップな手触りと一筋縄ではいかないバンド・サウンドが共存する楽曲に生き生きとした表情を与える、なかのいくみのヴォーカルも素晴らしい。さらに今作ではメンバーそれぞれのフレーズを積極的に取り入れたという。

 「以前は僕と加藤がデモ音源をしっかり作り込んでいたんですけど、今回はメロディーとコードだけを送って、〈どういう感じにする?〉と話し合いながら作った曲もあるんですよ。“モンスター”“変身”もそうなんですが、メンバー自身から生まれたフレーズを入れることでライヴでの説得力も違ってくるだろうし、特にヴォーカルに関しては、いくみ自身の楽曲の理解度が大事になってくると思っていて。例えば“プラズマクラシックミュージック”は、曲の主人公のヴィジュアルや設定までしっかり話し合いました。〈リクルートスーツを着た黒髪ロングの女性がカバンを地面にバン!と叩きつけて歌ってる〉みたいな。楽曲によってキャラクターがかなり違うし、そこにメンバーそれぞれの解釈や思ってることを落とし込みたかったんですよね」。

寺岡純二(ドラムス)
2012年に結成され、2018年に解散したフィッシュライフで活動

 〈何者かになりたい〉という切実な願いを込めたストーリー性、そして、幅広い音楽性と独創的なアンサンブルを共存させた音楽性。そんな『モンスター』によって、(夜と)SAMPOのキャリアは新たなフェーズへと突入する。

 「これまでは〈売れることがすべてじゃない〉というスタンスでしたけど、認められたい、たくさんの人に聴いてほしいという気持ちは絶対にあって。新曲が思ったように伸びないとめちゃくちゃ悔しいし、落ち込むし……。ただ、いちばん大事なのはやっぱり、みんなが幸せであることなんですよね。そこをちゃんとキープしたまま、自分たちの音楽を広げるにはどうしたらいいか。これからもその方法を模索していきたいと思ってます」。

メンバーたちが関与したバンドでの過去作を一部紹介。
左から、ハンブレッダーズの2018年作『純異性交遊』(ハンブレコード)、加速するラブズの2016年作『みずいろのなかのラブレター』(チマスト・ディスク)、フィッシュライフの2018年作『未来世紀エキスポ』(too basara's people)

(夜と)SAMPOの作品を紹介。
左から、2020年のシングル“夜と散歩”、2021年のEP『ノストラダムス』、2022年のEP『はだかの世界』(すべて(夜と)SAMPO)