個が主体的に動くコレクティヴ
ただ、それぞれが長いヴァースをとっても、持ち重りのしない聴感があるのは、カラフルなラップ・スキルに加え、Chaki Zuluの手掛けた“Rodeo13”や、再構築された“BE THE MONSTER”で見せるダンサブルさに加え、4分を超えない楽曲構成による部分も大きいだろう。
「長さはこだわったし、取捨選択をしっかりして、整理整頓する作業には全員で関わって時間をかけました。そのうえでビートや構成をみんなで話し合って固めていったので、より密度の高い作品になったと思いますね」(Cosaqu)。
「Cosaquさんの新しいスタジオで集まって作ったのも大きいと思いますね。前は個別にヴァースを録って投げ合うみたいなことも多かったんやけど、スタジオで膝つき合わせて意見を出し合ったり、それぞれのラップを確認したりしたうえで作ったから、より精度は増したと思う」(KennyDoes)。
個人的には、ラッパーとしての存在性が、それぞれの差異のなかで明確になった作品だと感じた『Unfold Collective』。それによってそれぞれの主体性が明確になり、役割が確立された。〈サイファー〉という出入り自由な存在ではもはやないが、〈グループ〉ほど束縛性も強くない、アルバムで言えば〈他人〉同士が主体的に集まり、ひとつのものを構成していく、まさに〈コレクティヴ〉としての梅田サイファーが形になったといえる。
「そう思ってもらえるなら『Unfold Collective』という今回のタイトルとコンセプトがまっすぐ伝わったと思いますね。それぞれのキャリアも長いから、自分のスタイルが明確になったし、そのうえで他のメンバーにパスを出せるというか。かつ、それぞれの 尺が長くなることによってスタイル・ウォーズの部分がより大きく出たのかなと」(テークエム)。
そこで生まれた強度は、〈EVO Japan 2024〉のテーマソングとして制作された“CONTINUE”など、外部と接続した楽曲にも反映されている。
「毎回新鮮なチャレンジですね。作品やそのテーマ性と自分たちをどう重ね合わせるかは、常に新しい挑戦でもあるし、大変でもあるんですが、それがリリックやラップの成長になってます」(KennyDoes)。
「自分自身、アニメやゲームのようなコンテンツがすごく好きなんで、関われること自体が楽しいです」(KOPERU)。
そして9月より全国ツアーがスタート。
「『RAPNAVIO』で培ったチーム感や全員で動き出す瞬間のおもしろさと、今回のアルバムでの個としての動きがしっかり合わさったら、とてつもないライヴができるという自信があるんですよね。それをちゃんと形にしたいし、濃厚で躍動感のある〈ザ・ラッパー〉のステージを見せたいと思いますね」(KOPERU)。
「今回はR-指定とDJ SPI-Kが参加できないので、それは残念ではあるんですが、それでも他のメンバーで梅田サイファーを形にできればと考えています。そして、その2人が戻ってきたときに、さらに飛躍するためのツアーにしたいと思ってるので、ぜひ目撃してほしいですね」(Cosaqu)。
「自分たちにとって、表現のハードルが上がったアルバムだと思うんですね。逆に言えば、自分たちを鍛えて、それを超えることができれば、とんでもないものが届けられると思うので、楽しみにしてほしいです」(KennyDoes)。
「梅田が初上陸する場所もたくさんあるので、新しい人に僕らのライヴを観てもらえる機会が増えるのはすごく嬉しいし、気合が入っています。みんなと会えるのが楽しみです」(テークエム)。
彼らがなぜ〈ラップ〉を選び、〈ラップ〉で繋がり、〈ラップ〉を表現し、そこからいかに梅田サイファーを派生させるのか。その根本がこのアルバムにある。
2024年にリリースされたALIと梅田サイファーによるスプリット・シングル。
左から、『Professionalism feat. 般若/Odd Numbers』 『スイッチ/BEYOND feat. MaRI』(共にソニー)
梅田サイファーとメンバーの作品を一部紹介。
左から、梅田サイファーの映像作品『UMEDA CYPHER “RAPNAVIO” RELEASE ONE MAN LIVE 2023 at 服部緑地野外音楽堂』(ソニー)、KOPERUとISSEIの2017年のコラボ作『カマトト』(DREAM BOY)、KZの2020年のシングル“I gotta”(INGR)
左から、Lil' Leise But GoldとKMの2022年作『喧騒幻想』(Mary Joy)、KMやChaki Zuluらが参加した(sic)boyの2023年作『HOLLOW』(ユニバーサル)、BACHLOGICが参加したKvi Babaの2023年作『Jesus Loves You』(トイズファクトリー)、DJ Mitsu the Beatsの2022年作『MAGNETAR』(Jazzy Sport/Village Again)