首謀者のイアン・バートンが両親宅で全楽器を演奏/録音したという初作。ヒップホップやソウル、ギター・ポップ……さまざまな音楽をパッチワークしたサウンドは実に色鮮やかで鮮烈だった。20周年記念盤には当時サンプル許諾を得られていなかったCD-R版の音源が収録されており、これは必携だろう。以降、ももいろクローバーZの楽曲を手掛けるなど日本との繋がりも多いが、リリースの翌年にHandsomeboy Technique『Adelie Land』という最上のアンサーが京都から生まれたことも記憶されておくべきだ。 *田中
どの時代でも唐突にオーセンティックなポップ・ナンバーがヒットすることがあるが、この時期においては彼の“You’re Beautiful”がまさにそれだった。イングランド・ウィルトシャー出身のシンガー・ソングライターが発表したファースト・アルバムで、そこに収められていた同曲をシングル・カットするや本国はもちろん全米チャートでも首位を獲得したのだ(日本ではドラマ挿入歌やCMソングで使用されて人気となった)。素朴で誠実な魅力に溢れた本作は、このたびデモ音源やBサイド曲などを網羅した2CD仕様の20周年エディションも届いたばかり。 *亜蘭
先に成功していたダニエル・ベディングフィールドの妹として知られるも、すぐに逆転することになった英サセックス州のシンガー/ソングライターのファースト・アルバム。クリスティーナ・アギレラらが歩んだポップスター道をアップデートして挑戦的で野心的な表情をあらかじめ身につけ、独立した女性の素晴らしさを歌ったデビュー・シングル“Single”は全英1位を獲得。ガイ・チェンバースやスティーヴ・キップナー、グレッグ・ウェルズらを招いた本作もヒットして、UKポップ・シーンのニュー・ブリードとして一世を風靡した。 *亜蘭
2022年には現時点での最新アルバム『The Other Side Of Make-Believe』をリリースするなど、結成から四半世紀を経て安定した活動を続けるNY発バンドの2作目。ソリッドかつダンサブルな演奏と耽美な歌声を重ねたポスト・パンキッシュな音楽性は、この時期に登場した多くの同輩インディー勢と共通するものの、なかでも彼らは真っ直ぐに己の美学を表現していて、それゆえに本作も発表直後から現在に至るまで〈クラシック〉の風格を漂わせている。20周年を記念したレッド・ヴァイナルでリイシューされたばかり。 *田中
泥沼の裁判で争ったソニーとの再契約でも驚かされた通算4枚目のオリジナル・アルバムで、本人が〈商業音楽の作品はこれが最後〉と語った通りになってしまった。皮肉めいた“Shoot The Dog”を筆頭に当時の社会情勢への眼差しを鋭く光らせつつ、健在なポップセンスを見せた快作だ。 *亜蘭
作品ごとに異なるコンセプトを立てる彼女だが、この5作目はほぼすべての音を〈声〉で作った野心的な一枚。マイク・パットン、元ル・ツのラーゼル、ロバート・ワイアット、アイスランド合唱団らの歌唱/発声を貼り合わせ、神秘的なアンビエンスや有機的なリズムを浮かび上がらせていた。 *田中
押しも押されぬ日本のヒップホップの大御所が成熟期にリリースした佳作。その精神性を瑞々しく表現した“ザ・グレート・アマチュアリズム”は当然最高だが、“911エブリディ”から“WELCOME2MYROOM”へと連なったある種の翳りを帯びた心情は現代の耳にも響くはず。 *亜蘭
90年代から00年代に絶大な支持を誇ったカントリーのスター。当時は外の世界から注目されなかったものの、優しく逞しい古典的な歌心を備えたこの8作目も全米1位を獲得している。本作を受けて書かれた“Tim McGraw”でテイラー・スウィフトがデビューするのは2年後のことだ。 *亜蘭
スコットランドのシンガー・ソングライターによるファースト・アルバム。ここに収録のシングル“Suddenly I See”は映画「プラダを着た悪魔」やドラマ「アグリー・ベティ」で使用された洋楽ヒットで、その時代のタフな女性像が浮かぶ。昨年はスージー・クアトロとコラボ作も出していた。 *亜蘭
80年代末の結成からメジャー進出〜インディー活動を経るなかでの通算10作目。近年もCMなどでいろんな人が歌っている“深夜高速”はここからの先行シングルで、生き様を刻み込んだようなメッセージがゆっくり広がりながら多くの人の灯火や道標となるタイムレスな名曲となった。 *亜蘭