
未来は明るくないが、せめて今だけは一緒にいたい
では、アルバム『Under Blue』の新録曲を紹介していきたい。アルバムのオープニングを飾るのは“lazy cat”。この曲はディープで骨太なグルーヴを生み出すベースライン、ラップを交えたボーカル、身体の深い部分にまで浸透するビートを軸にしたナンバーだ。未来に対する薄暗いイメージとともに〈どうしようもない 変わんないさ/だけどもう少しなるようにはなるさ〉と微かな希望の光を描き出すこの曲は、2024年という時代の在り方を象徴している。
6曲目の“花星”は、奥深い響きをたたえた鍵盤の音、まるで鼓動のように鳴らされる4つ打ちのリズム、抑制を効かせたメロディが響き合うミディアムチューン。題名の“花星”はおそらく、地球のメタファー。〈希望的観測 夢は幻〉というフレーズが示すように〈この星〉に対するビジョンはかなりネガティブであり、だからこそ、孤独を抱えた人たちとつながりたいという切なる願いに胸を打たれる。淡々とした手触りのなかに強い感情を潜ませるボーカルも素晴らしい。
軽快なギターフレーズ、ダンサブルなビートから始まる8曲目の“Byme”は、アルバム『Under Blue』におけるポップサイドと呼ぶべき楽曲。シティポップ的な潮流を感じさせるサウンドメイク、笑顔で歌っている姿が浮かんでくるような歌声を含め、聴く者を包み込み、安心させるようなパワーを持っている。〈声を聞かせてくれよ〉〈愛の音を鳴らせ〉というラインもそうだが、ライブでの心地よい一体感を生み出すポテンシャルを持った楽曲と言えるだろう。
14曲目に収められた“Midnight Runway”は、穏やかなヴァイブスを内包したナンバーだ。ネオソウル系のギターカッティング、緩やかなファンクネスをたたえたビートはどこまでも心地よく、リスナーの心と身体をゆったりと揺らしてくれるはず。〈分かり合えないとしても、せめてこの夜だけは一緒にいたい〉というロマンティックで刹那的なつながりを描き出すリリック、そして、ファルセットを活かしたボーカリゼーションも美しい。
シックな雰囲気のシンセの音色、抑制された4つ打ちビートが聞こえてきた瞬間、異空間に誘われる。レゲエ的な裏打ち感を反映させたアレンジも印象的な“さよならエンドロール”は、本作のなかでも異色の1曲。美しさと不穏さを同時に感じさせるサウンドスケープ、サビのパートにおける意外性に溢れた展開を含め、Eve、Numa/Zingaiの自由なクリエイティビティを体感することができる。〈伝え方がわからない〉という諦めや絶望、〈少しだけ幸せになりたかっただけ〉という吐露など、揺れる感情を綴った歌詞もじっくり噛みしめてほしい。
表題曲“Under Blue”は、浮遊感と凛とした鋭さをたたえた音像を映し出すインタールード的な楽曲。まさに憂いを帯びた雰囲気が広がるなか、そのままラストの“夢に逢えたら”へとつながる。ギターと歌を中心としたシンプルなバンドサウンドで構成された“夢に逢えたら”は、優しさ、切なさ、美しさを込めたメロディラインがゆったりと漂うミディアムバラード。〈痛いくらいの夜はさ/どうしようもないくらい 心は青いまま〉からはじまり、〈今だけ御守りのように傍にいさせて〉という最後のフレーズに至る歌詞は、アルバム『Under Blue』全体のメッセージ性とリンクしているようにも感じる。私たちはずっと青いままで、ぼんやりとした憂鬱に覆われながら日々を過ごしている。この先の未来は決して明るくはなさそうだけど、せめて今だけは――音楽が鳴っている間だけは――一緒にいたいし、理解し合えるのではないか? まるで祈りように響く“夢に逢えたら”を聴くと、どうしてもそんな気分になってしまうのだ。