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いま日本で最もアッツーなプロデューサーKoshyのビート

またもう一つ重要な点は、この曲を手がけているのが日本のプロデューサーKoshyであること。〈Koshyアッツー〉というプロデューサータグでおなじみの彼は、高校生の時に知ったKOHHの存在が音楽を好きになるうえで大きかったと語っている。

Watsonとの仕事でも知られ、高く評価された彼の1stアルバム『Soul Quake』(2023年)や今年11月にリリースされた続編『Soul Quake 2』もKoshyが全曲を担当している。そして、前述の“チーム友達”もKoshyの仕事だ。まさに、いま国内で最もアツいプロデューサーの一人である。

“Mamushi”の制作に際しては、メグが「千葉に会いたい」と言ってコンタクトを取り、Koshyが普段使用している、王子のTriga Fingaのスタジオにメグ本人が来たのだという。Koshyと千葉のスタイルは、その場でビートを作り上げていく(ストックを使わない)方法。千葉がフリースタイルをしたなかからメグが自らセレクトし、現場でフックだけを録っていった、という制作秘話がラジオやFNMNLのインタビューで明かされている。

GとC、A♭とD♭のかなりシンプルなピアノのリフの反復を中心にしたビートのプロダクションは、非常にミニマル。「シンプルだし、速くもないから。ハットも2ステップのリズム早めのやつとかじゃないし、ノリも玄人系なのに、それで流行るのもヤバいなって」とKoshyは言うが、だからこその中毒性や覚えやすさがヒットの要因だったのだろう。

その単純さゆえの強度の高さは、〈お金稼ぐ 私はスター〉というリリックにしても同じだ。この子供ですら一発で覚えてしまうようなシンプリシティこそが、“Mamushi”という曲の肝である。

 

日本文化に満ちたMVやTWICEリミックスが登場

“Mamushi”を取り巻くその後の展開も追っておこう。アルバムを携えた〈Hot Girl Summer Tour〉では7月17日の英ロンドン、O2アリーナ公演に千葉が客演して“Mamushi”を披露した。

また先に書いたように7月30日にシングルカットされ、8月9日にミュージックビデオが発表された。笠松将演じるヤクザ風の若い男性が旅館のような建物に駆け込み、蛇があしらわれたカードを受付にいる千葉に渡すと、「どうぞ」とメグや下着姿の女性たちがいる部屋へ案内される。しかしメグは蛇に変身して笠松やほかの男たちを仕留め、肌を青く塗ってゾンビのごとく生き返らせ、彼らを軍隊のように統率し……というような展開だが、夢オチなのがおもしろい。

ゴージャスなビデオはケヴィン・“オンダ”・レイヴァが監督しており、鶴巻温泉元湯陣屋旅館や鎌倉の円覚寺で撮影されている。また黒澤明の晩年(1990年)の映画「夢」へのオマージュがなされており、いかにも〈和〉な意匠に満ちている。例のダンスを取り入れたパートが挿入されつつ、全体的にメグの性的な魅力がやけに強調されているのも見どころ(?)だ。

“Mamushi”は、米大統領選にも絡んだ。民主党候補カマラ・ハリスの支持を表明したメグは、7月30日にアトランタで開催された民主党大会で“Mamushi”を含む4曲をパフォーマンスしている。

“Mamushi”のMVは、9月11日に開催された〈2024 MTV Video Music Awards〉で新設部門の最優秀トレンディングビデオ賞を受賞した。司会も担当したメグのステージには、千葉が参加したことが話題になった。〈蝮〉のネオンサインをバックにラップするメグが「日本からはるばるやって来た! 初登場の雄喜!!」と呼び込み、2人でパフォーマンスしている。

さらに、なんとTWICEをフィーチャーしたリミックスも制作された。10月25日に発表されたアルバムのデラックス版と言える『MEGAN: ACT II』に収められた、意外なバージョンだ。随所でTWICEのMOMOとSANA、MINAが日本語のアドリブ(合いの手)を入れ、2ndバースでJIHYO、NAYEON、JEONGYEON、CHAEYOUNG、TZUYU、DAHYUNの6人がキレのある英語ラップをキメている。〈別の言葉をみんなに歌わせる、私ってDuolingoみたいでしょ〉といった、メグの新たなラインが加えられているのもおもしろい。

そして千葉が12月12日にサプライズリリースしたアルバム『STAR』(Koshyが全曲をプロデュース)は、タイトルからして“Mamushi”のヒットとの関連が窺える。収録曲の“止まれん”では渡米時の経験をラップしており、〈MTVアワード ニューヨークで会うミーガン〉というラインもある。