改めて光を当てたいプロトパンクの名作
MC5とストゥージズについてはまだまだ書き足りないのだけれど、それはまた別の機会に譲るとして、後半では彼らと同時期に活動していたプロトパンクバンドたちを紹介していこう。連載の主旨に沿うべく現在ではあまり日の目を見ることがないバンドやアルバムを中心にセレクトしているので、こちらは別の機会に譲りようがないのである。
アリス・クーパー『Pretties For You』(1969年)
見過ごされがちだが、アリス・クーパーはMC5やストゥージズと同じくデトロイトから同じ年にデビューしている同期生である。のちの活躍から蛇をはべらせたヘヴィメタル畑の人という印象があるかもしれないが、フランク・ザッパに見出されて彼のレーベルからリリースされたファーストアルバム『Pretties For You』は、ザッパ譲りの一筋縄ではいかない奇天烈ロックとして一聴の価値ありだ。劇的に変化するシアトリカルな曲調と、狂犬のようなファズギター。ストレートなパンクとは言えないが、この悪意と冷笑が入り混じったような諧謔的サウンドは、ペル・ウブやスウェル・マップスの腹違いの兄貴のようにも思える。
ブルー・チアー『Vincebus Eruptum』(1968年)
デトロイト勢よりも一足早くデビューを飾ったサンフランシスコのブルー・チアーも絶対外すわけにはいかないバンドだ。基本はブルースベースのトリオ編成ながら〈たった3人でどれだけ騒々しい音が出せるのか〉ということだけに注力したようなサウンドは、ほとんど爆音ガマン大会の様相である。とりわけエディ・コクランの名曲をカバーした“Summertime Blues”のダーティーな暴力衝動はルーツオブパンクの名に恥じないが、驚くべきはこの曲が全米チャート14位まで上りつめたこと。1960年代末とはかくも壮絶な時代だったのだ。
ダスト『Hard Attack』(1972年)
NYのダストもトリオ編成のバンドだが、ブルー・チアーに比べて知名度は低いし残されたアルバムも2枚しかない。ジャンルも黎明期のハードロックという区分けなのだろうけれど、でもこれがなかなかにカッコいいのだ。ファーストも悪くないがセカンドアルバムの『Hard Attack』は土臭さが薄れたぶん“Learning To Die”などパンクの血中濃度が高めな曲が多い。やたら手数の多いドタバタドラムを叩いているマーク・ベルは、その後リチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズを経てラモーンズに加入するマーキー・ラモーンその人。それを後から知って〈道理で!〉と得心した記憶がある。


