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歌は声。息ができる限り歌えるはず

――本日はありがとうございました。個人的な感想として、『for peace』を拝聴して日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞したことを思い出したんです。

加藤「それはね、このアルバムを作るフックにすごくなりました。それこそ約100年前のヨーロッパでは不戦条約が締結されましたが、日本の憲法9条は不戦条約の思想を元にしていますよね。でも結局、世界中が不戦条約の思想を潰してきちゃったわけです。その意味で、日本が被爆の経験を世界共通のテーマにしていこうとしたことはとても重要で、日本が不戦条約の哲学をバトンとして受け取った国だということは改めて意識していいと思います。国として先頭を切ってほしいですね。

それに今回、“広島愛の川”で言ったように、日本が戦争を早く終わらせていれば世界は変わっていたかもしれない。日本は、日本人は、すごく大きな責任を負っていると思います」

江﨑「そうですね。この加藤さんの事務所には『はだしのゲン』が置いてありますが、以前、学校の図書室から撤去されるというまずいニュースも見聞きしました」

加藤「いまはまた戻しているそうですね。私もあの時は、その話を聞いてびっくりしました」

江﨑「日本の僕らが伝えていかなきゃいけないことはたくさんあるし、原発事故という点では大変な思いをしたチェルノブイリの人たちと共有できるものがある。誰もが〈テクノロジーの発達が未来を明るくするんだ〉という方向を向いているからこそ、批判的に見なきゃいけないと思います。

音楽家から伝えられることは、いかに違う考えを持っている人たちとも手を繋ぐきっかけを生み出せるかどうか。それに尽きると思います」

加藤「音楽家として、やれることは何でもやったらいいですよね。龍一さんみたいに、できるだけエネルギーを使わずピアノ一本で音楽をやったり、雨ざらしのピアノや津波に遭ったピアノに宿る命は何?と問いかけたり。歌は声。だから、息ができる限りは歌えるはずです」

江﨑「しかも歌は、人々の声がどんどん重なってやがて一つになったり、だんだん波及したりするじゃないですか。音楽が持ついちばん強いエネルギーって、色々な人たちの力が一つに集約されていくことにある気がするので、それこそが音楽家がやらなきゃいけないことだなと。対立を生むのではなく、どうやって手を繋ぐか。紡いでいく作業が音楽家の使命じゃないかなと思います」

加藤「今回、“生きとし生きるもの”で劇団ひまわりの子どもたちにコーラスをやってもらったんです。上手に訓練されたコーラスじゃないけど、彼らは個人の意思表示が強くて表現力があるんですね。

その録音の時、ブレヒトの『子どもの十字軍』というお芝居の話をしたんです。村が焼き払われ、守ってくれる人がいなくなった子どもたちが生き抜くため、旗を立てて歌いながら歩き出した、行進した、という物語ですね。親はみんな死に耐えて村も破壊され、だけど自分たちは生きてるぞって。そんな時、泣いてしまうかもしれないけど、それじゃ済まないでしょう? 厳しい、辛い、寂しいという感情を抑えるため、高らかに声を上げるでしょ?と、ひまわりの子たちに説明しました。楽しいから元気に歌うんじゃなく、このまま放っておいたら死んじゃうかもしれないぐらい大変で、だから歌うんだって。みんな一生懸命聞いてくれて、そういう空気が表れたコーラスになったと思います」

 


RELEASE INFORMATION

加藤登紀子 『for peace』 ユニバーサル(2025)

リリース日:2025年5月21日(水)
品番:UPCY-8047
価格:4,000円(税込)

TRACKLIST
Disc 1
1. 雨音
2. 運命の扉
3. 80億の祈り
4. 生きとし生きるもの
5. きみはもうひとりじゃない
6. サルダーナ
7. さ・か・さの学校
8. 風が吹いています
9. 死んだ男の残したものは
10. 広島愛の川 - 語りヴァージョン「はだしのゲン」より
11. 鳳仙花
12. 遠い祖国
13. 童神~天の子守唄~
14. 無垢の砂~「パリは燃えているか」によせて~
15. さくらんぼの実る頃
16. 愛の讃歌 
17. 百万本のバラ
18. 知床旅情

Disc 2
1. 難破船
2. 時には昔の話を
3. ひとり寝の子守唄
4. この世に生まれてきたら
5. いく時代かがありまして
6. あなたの行く朝
7. 時代おくれの酒場
8. 今あなたにうたいたい
9. LOVE LOVE LOVE
10. Revolution
11. 川は流れる
12. NEVER GIVE UP TOMORROW
13. 檸檬 Lemon
14. 君が生まれたあの日
15. この手に抱きしめたい
16. 俺たちは海を渡る
17. 帆を上げて

 

LIVE INFORMATION
加藤登紀子コンサート2025

2025年6月7日(土)鳥取・鳥取市民会館
2025年6月22日(日)東京・渋谷 NHKホール
2025年6月28日(土)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2025年7月5日(土)大分・iichiko総合文化センター iichiko音の泉ホール
2025年7月6日(日)福岡・アクロス福岡 福岡シンフォニーホール
2025年7月13日(日)長野・長野芸術館メインホール
2025年7月20日(日)愛知・愛知芸術劇場コンサートホール
2025年8月9日(土)秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
2025年8月15日(金)東京・渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
2025年8月23日(土)中国・ハルビン音楽庁ホール
2025年8月31日(日)神奈川・小田原三の丸ホール 大ホール
2025年9月7日(日)新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
2025年9月13日(土)栃木・栃木県あしかがフラワーパークプラザ
2025年9月15日(祝・月)京都:レストラン・キエフ
2025年10月12日(日)香川・レグザムホール 小ホール
2025年10月18日(土)山梨・YCC県民文化ホール 小ホール
2025年10月25日(土)兵庫・赤穂市文化会館 赤穂化成ハーモニーホール
2025年11月1日(土)静岡・アクトシティ浜松 中ホール