Page 2 / 3 1ページ目から読む

2025年のサザンの歌

今回のセットリスト全28曲(アンコール含む)のうち『THANK YOU SO MUCH』からの楽曲は実に12曲。アルバム収録曲14曲のほとんどが演奏されたのだ。つまり、ツアータイトルに違わず、アルバム『THANK YOU SO MUCH』がステージの根幹を担っていた。今年3月発売の雑誌「BRUTUS」のサザン特集号でも筆者が桑田にインタビューを行った際、直接、本人に伝えたが、新曲こそがサザンをサザンたらしめていた、と言ってもいいだろう。

何せ数多の名曲を擁するサザンである。ぶっちゃけ、どんなセットリストも過去曲だけで無数に組める。しかし、桑田はそれで人前に出るのを〈怖い〉と語るのだ。もっとも、桑田自身は本気でそう思っているのかもしれないが、この〈怖い〉には現役選手だからこその矜持(プライド)も含まれているはずだ。そんな桑田だからこそ、サザンが第一線でここまで来たのだと思う。

実際、“ジャンヌ・ダルクによろしく”のみならず、能登をはじめ震災に見舞われた各地への思いを乗せた“桜、ひらり”といい、戦後日本のポップスを形成した先達へのリスペクトがこめられた“神様からの贈り物”といい、自然破壊や戦争など現代の人類への警鐘を綴った“史上最恐のモンスター”といい、ノスタルジックな哀切が漂う掌編小説のような“暮れゆく街のふたり”といい、原 由子のボーカルで江の島/鎌倉への憧憬を歌う“風のタイムマシンにのって”といい、どの新曲も確かに2025年のサザンの歌であり、見事なまでにライブ映えしていた。

本ツアーは、サザンとしては珍しく、まずツアーが始まり、その途中でオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』がリリースされるという流れだった。ツアー序盤では観客が固唾を呑みながら聴いていたような新曲も、この日はすでに耳馴染みのあるナンバーとして、もれなく盛り上がっていたことも記しておきたい。

途中、弾き語り形態のアコースティックコーナーを設けて2曲をパフォーマンス。「デビュー前、関口と知り合った頃に作った」という“別れ話は最後に”でじっくりと聴かせたあと、「アルフィー(THE ALFEE)より年下です。上がいるからまだまだ辞められません!」というMCで観客の笑いと拍手を誘い、「Takamiy(高見沢俊彦)より年下です」からの「石破総理より年上です」を経て、「コメは行き渡ってますか?」という軽妙な語りかけから、ボブ・ディランばりのストロークと節回しで日本のポピュリズムやジャーナリズムを風刺した“ニッポンのヒール”(ライブでは26年ぶり!)を放つという痛快な流れには、〈やるなあ〜!〉と唸るほかなかった。

 

驚きと笑いが止まらないクライマックスへ

終盤はバンド形態に戻って、ニューアルバムで組曲的に配置されていたサザンロックテイストの“悲しみはブギの彼方に”、“ミツコとカンジ”を続けて披露。初期のサザンのバンドサウンドの醍醐味と桑田のブルージーなスライドギターがドームいっぱいにこだました。

さらにユニクロのCMタイアップでの露出をはじめ、ニューアルバムのリードトラック的な役割を担った軽快なロックナンバー“夢の宇宙旅行”、現代社会の暗部を想起させる“ごめんね母さん”(個人的には演出面で昨年4Kレストア上映されたトーキング・ヘッズ「ストップ・メイキング・センス」を思い出したり)、ドームをノリノリなダンスフロア状態に持って行った“恋のブギウギナイト”とカラフルで豊かな新曲を連発していく。

クライマックスは“LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜”、“マチルダBABY”、“ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)”で畳み掛けるという怒涛の攻勢で、ラストは観客のあらゆる感動や感慨や陶酔を自らちゃぶ台返しするかのようなどエロい演出の“マンピーのG★SPOT”で昇天。桑田の衣装は(今回はマンピー砲?を模した)この曲恒例の特注ヘルメットにトンボみたいな羽(よく見ると“ごめんね母さん”の歌詞に登場する〈ウスバカゲロウ〉と書かれた名札が。何でこんなところで伏線回収してるんだ?)が生えているわ、ダンサーの振り付けはほとんど四十八手だわ、もうヒド過ぎて驚きと笑いが止まらなかった(褒めてる)。