幼少期を過ごした家の住所をタイトルに冠した3作目『2014 Forest Hills Drive』が、業界のセオリーをことごとく無視していたにもかかわらず(先行シングルの発表もなければゲスト・アーティストの参加も皆無だった)自身初のミリオン・セールスを記録。その自信/自覚の表れなのだろうか、前作からちょうど2年を経てのJ・コールのニュー・アルバムはさらにディープかつパーソナルな内容となった。22歳の若さで亡くなった旧知の友、ジェイムズ・マクミランJrの短い生涯と対時した内省的な歌詞世界は、人種差別を主題としながらも、アメリカ社会を生きる黒人男性の成長譚という側面も持ち合わせる。子どもを授かったばかりのコールの視点が強く反映された“Foldin Clothes”~“She’s Mine, Pt. 2”の流れはとりわけ感動的だ。ソーシャル・エクスペリメント、スティーヴ・レイシー、セオ・クロッカー、BIGYUKIなど、コールの語り口にぐっと深みを与えるサポート陣の燻し銀の仕事ぶりも素晴らしい。トータル10曲44分、ゲストなし。