
ハード・グルーヴに乗って躍動する、オーガニックなトランペット・サウンド
ジャズと、ヒップホップ&ソウル・ミュージックの境界線を、軽々と超えていくトランペットの新星セオ・クロッカーのメジャー3作目『Star People』は、彼自身が「30年かけて追求していたアフリカ系のアーティストとしてのアイデンティティが、ついに自らのブラック・アメリカン・ミュージックと融合した」と語る野心作だ。
クロッカーは、ジャズ黎明期から1990年代まで長い活躍をしたレジェンド、ドク・チーサム(tp,vo)を祖父にもって生まれた。大学時代は、フュージョンのパイオニアの一人、ドナルド・バード(tp)の薫陶を受け、卒業後7年間を上海で過ごす。2010年に同地でプレイしたディー・ディー・ブリッジウォーター(vo)に見出され、2013年に帰国しブリッジウォーターのサポートで、2014年に『Afrophysicist』をリリース。2016年の『Escape Velocity』で大きな注目を集める。クロッカーはJ・コール(rap)の『4 Your Easy Only』、コモン(rap)の『Black America Again』、アリ・レノックス(vo)の「Shea Butter Baby』に起用され、かつてエリカ・バドゥ(vo)やコモンと共演したロイ・ハーグローヴ(tp)に匹敵する存在へと、名乗りを上げた。

THEO CROKER Star People Nation Okeh/Masterworks(2019)
そして前作から18ヶ月を費やして、セルフ・プロデュースで完成したのが本作だ。全編に渡るハード・グルーヴの上で、オーガニックなトランペット・サウンドが躍動する。
ELEWことエリック・ルイス(p)をフィーチャーした《The Messenger》はスウィンギーなブルースで、自らのルーツを誇示する。ジャマイカ出身のChronixxをフィーチャーした《Understand Yourself》は、アフリカン・パーカッションとカリビアン・テイスト、アメリカン・ジャズ・ホーンの見事な融合だ。
ロバート・グラスパー(p,kb)に続く新世代の快進撃が、今始まった。