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教育であり娯楽
映像の見どころはどうか。開巻、スクリーンが上がってウォーターズが登場。フロイド時代の大ヒット“Another Brick In The Wall (Part 2)”を前後に2曲を追加してメドレーで演奏。なお、スクリーンにはメッセージが映し出されるのだが、ウォーターズのセカンド・ソロ・アルバム『Radio K.A.O.S』(87年)収録の“The Powers That Be”では、権力による不当な弾圧を批判するアニメーションが投影される。
第2部では、“In The Flesh”“Run Like Hell”と、ピンク・フロイド『The Wall』のなかでも異彩を放つ2曲を演奏。もともと内気で内省的な主人公のロックスター〈ピンク〉が独裁者として復活する場面を描くというストーリーの2曲だが、このステージでウォーターズは独裁者風の格好で登場し、“In The Flesh”のエンディングでは客席に向けてマシンガンを乱射する動きを真似る 。
さらに、豚の風船をステージ上空に飛ばすひと幕も。豚の胴体に書かれているのは〈貧乏人はクソ食らえ/貧乏人から盗め/富裕層にカネをやれ〉というスローガンである。ややもすれば生真面目すぎて聴く人を選ぶメッセージも、こうした趣向を凝らした演出によって親しみやすくなっている印象だ。
ヒップホップ的に言うなら、これは彼なりのエデュテインメントではないだろうか。エデュテインメントとは、 教育(Education)と娯楽(Entertainment)を組み合わせた造語。つまり、政治的主張にユーモアや娯楽の要素をひと匙盛ることで、教育効果を倍増させているように思えるのだ。