©Terrence O'Connor

過去を生きるのはもうやめた! 5年ぶりの新作でLAの3姉妹は前を向いて歩きはじめる!

 カリフォルニア出身の3姉妹、エスティ、ダニエル、アラナから成るハイム。これまでにグラミーの〈最優秀新人〉部門や〈年間最優秀アルバム〉にノミネートされるなど、さまざまなスタイルを自分たちの楽曲に取り込む独自のセンスと特徴的なサウンドによって広く愛されてきた。そんな彼女たちが実に5年ぶりのアルバム『I quit』を完成。思わせぶりなタイトルだと思ったら、ダニエルは10年以上も交際していたアリエル・レヒトシェイドとの破局を経験していたのだ。アリエルといえばデビュー作『Days Are Gone』(2013年)から制作に参加し、前作『Women In Music Pt. III』(2020年)の頃には制作面のメインを務めるなど、これまでのハイム・サウンド確立に深く貢献してきたひとりである。

HAIM 『I quit』 Columbia/Polydor/ユニバーサル(2025)

 別離によって制作面でのパートナーシップも解消され、今回の4作目ではロスタム・バトマングリ(元ヴァンパイア・ウィークエンド)が新たにプロデューサーとして加わっている。ロスタムは2作目『Something To Tell You』(2017年)にも関わっていたが、アラナは「これまででいちばん自分たちが望んでいたサウンドに近づけることができた」と語る。ダニエルだけでなく姉妹のそれぞれが自身の恋愛〜失恋から学んできたわけで、自分で選んだ自由を謳歌することをテーマに気持ちを入れ替えてアルバム制作に取り組めたのは疑いない。12年ぶりの〈フジロック〉出演も控えるなかで、心機一転した姿を楽しみにしておきたい。