同窓会のようでいて、現代トラップにも繋がる音楽性
“I Want It All”以外にもストレートなフューチャリスティックスワッグ路線の曲は多い。リッチ・キッズからスクーリーとシャド・ダ・ゴッドを迎えた“Loose Screws”は、スクーリーの気持ち良さそうな歌い上げフロウが陽気なビートに完璧にマッチした一曲。初期は10代だった彼らもアラサーに突入してやんちゃなキッズ感は流石に薄れているものの、やはりこのタイプのビートに乗る彼らならではの輝きが感じられる。
そんな初期リッチ・キッズの代表曲“My Partna Dem”のタイトルをヤング・ドローが口ずさむ“Issa Party”では、“Party Like A Rockstar”のヒット後にフューチャリスティックスワッグのシーンに合流したショップ・ボーイズのミーニーがフックを担当。シャド・ダ・ゴッドとファスト・ライフ・ヤングスタズのアイマクフライ(iMcFli)までが登場する、さながらフューチャリスティックスワッグ同窓会といった面々によるパーティチューンとなっている。
そのほかにも“My Lil Shit”、“Still Turnt (Forever B$hot)”、“Drip BBQ”……などなど、あの頃のアトランタを知るリスナーを当時にタイムスリップさせるような曲を多く収録。当時を知らないリスナーは今までのメトロ・ブーミン作品とは異なる方向性のサウンドに困惑するかもしれないが、ヤング・サグとスクーリーの共通点を強調するような“Birthday”が示すように現代のトラップとフューチャリスティックスワッグは確実に繋がっている。決して遠いものではないのだ。
〈嘘ギター〉の再解釈
一方で、本作はストレートなフューチャリスティックスワッグとは異なる表情も見せている。まず一つ大きなポイントとして挙げられるのが、ロック風だが生演奏っぽくないギターの音がほとんど使われていないことだ。私はこれを〈嘘ギター〉と呼んでいるのだが、ロスコー・ダッシュの名曲“All The Way Turnt Up”やファスト・ライフ・ヤングスタズの“Party Time”、ジュークボックスの“Surf Or Die”などフューチャリスティックスワッグではたびたびこの音色が使われてきた。
本作でもロスコー・ダッシュとクエイヴォがメロディアスに決める“Butterflies (Right Now)”や同窓会に21サヴェージが混じる“Partying & Drinking”などでギターは使っているのだが、打ち込みではなくメトロ・ブーミンのレーベル、ブーミナティ・ワールドワイドお抱えのクリス・XZが生でプレイしている。その質感もアーニー・アイズレーのような艶やかなものであるなど、フューチャリスティックスワッグの嘘ギターとは違った魅力があるものだ。